『鶴瓶の家族に乾杯』(NHK)にも
わさおに変化が見られたのは昨年暮れのことだ。だんだんと老化が進み、今年4月には立ち上がることができなくなってしまった。毎朝、おやつとともに薬をのませていた工藤さんは、6月8日の夕方もいつも通りわさおのもとを訪れた。
「おじいちゃんが縁側で陽だまりの中で穏やかに眠りに落ちて『おじいちゃん』と呼ばれても返事をしなくなって…という“こんなふうにいけたらいいな”と思うシーンそのものでした。18時前頃、『ワウ、ワウ』と文句を言うようにして、眠りに落ちて。また起きて『ワウ、ワウ』と。それを何回か繰り返して、あぁまた寝たなぁと思ったら背中の波打ちが止まっていました。母さんから“最後まで面倒見なさい”と言われていましたが、まさに最期を看取れて、わさおをひとりぼっちで旅立たせるようなことにならなかった。最後まですごいやつです、わさおは」(工藤さん)
わさおの物語は鮮やかなエンディングとともに幕を閉じた。工藤さんは、わさおの不思議な魅力をこう語る。
「わさおはひとつの宇宙です。どんな望遠鏡を使うか、どんな気持ちで見るかで宇宙が違って見えるように、わさおの魅力もいくつもの答えがあるんです。大きな星空の下に立って、空を眺めたときの圧倒的な美しさに感動するような、わさおはそんな存在です」
住民票を特別に交付され、観光大使も務めたわさお。その隣にはいつも母さんがいた。
「母さんが亡くなって最初の頃は、よく姿を探していました。散歩から帰ってきてまっすぐ小屋に入らずに、お店に寄っていつも母さんが座っていたところを確認して、それを何日も繰り返して“いないんだな”とわさおなりにわかったようです。そのうえで“ここで母さんを待つ”と決めた。それがわさおの生きる活力だったんだと思います。そんな姿に我々は救われました」(工藤さん)
『天才!志村どうぶつ園』(日本テレビ)のロケでは、故・志村けんさんも訪れた。
「志村さんは愛犬のちびと一緒にロケに来てくれたんです。志村さんはシャイな人だから、あんまりわさおにベタベタすることはなかったね。でも心は通じ合っているというか、お互いにリスペクトし合っているなというそういう雰囲気でした」(忠光さん)
撮影/末並俊司
※女性セブン2020年7月2日号