国内

SNSでの「晒しあげ」 特殊詐欺集団と複雑に絡み合う背景

特殊詐欺メンバー募集はSNSで行われている(時事通信フォト)

特殊詐欺メンバー募集はSNSで行われている(時事通信フォト)

 ツイッターで「持ち逃げ」と検索すると、国政への怒りのツイートとともに、具体的に人名や家族構成、写真など個人情報を掲載した人探しツイートがいくつか見つかる。金を持ち逃げした人物なので探しており、目撃したら連絡してほしいという内容なのだが、このうちの少なくない件数が、特殊詐欺に関係した人物捜索なのだという。ライターの森鷹久氏が、SNSによって集められ、SNSによって捜索される特殊詐欺要員の変質についてレポートする。

 * * *
 今年5月、埼玉県和光市のマンション駐車場に駐まっていた車の中から刺殺体が見つかった事件で、埼玉県警は死体を遺棄した疑いで埼玉県内在住の男(23)と、東京都内在住の少年(19)を逮捕した。県警はすでに、この事件に関与した疑いで複数の男たちを逮捕していたが、彼らに共通したのは「詐欺事件」にも関わっていたのではないか、ということである。

「捜査当局によれば、逮捕された者たちは、いずれもSNSなどで集められた詐欺集団の末端要員です。特殊詐欺で現金の出し子や受け子役を担っていたとみており、なんらかのトラブルから被害者を殺害するに至ったようです」(大手紙警察担当記者)

 被害者は大分県出身の31歳男性。周辺取材を行うと、被害者が少々やんちゃな青春時代を過ごしていたことは判明したものの「殺人事件に巻き込まれるほどの悪ではない」(被害者の地元知人)といい、関東に出てきて以降、金銭的に逼迫するなどし、軽い気持ちでSNSを用いて詐欺集団に接触を試みていたのではないか、という可能性も見えてきた。捜査中ではあるが、そうした犯罪グループにみられやすい「仲間割れ」と、さらに「凶暴化」するメンバーの典型的なパターンの先に起きた殺人事件ではないかと思われたのだ。

 なぜ、彼らはすぐに仲間割れを起こし、そして凶暴化しやすいのか。

「いまでは特殊詐欺事件に関して、実行部隊はほぼ100%、SNS上で集められるようになった。犯行前に落ち合った時が初対面で、自己紹介もなければ、最後まで互いの年齢や名前すらわからないし、出すな、と指示役から指導されている」

 こう説明するのは、2010年代前半に、自らも特殊詐欺の指示役として逮捕された経験のある会社員・嶋崎文夫さん(仮名・40代)。嶋崎さんが犯行に手を染めていた時代、詐欺事件の末端役は地元の下級生や不良グループの後輩であるパターンが多く、嶋崎さんも、後輩が逮捕されたことによる当局の突き上げ捜査によって関与が発覚、逮捕されたのだった。

関連記事

トピックス

中居、国分の騒動によりテレビ業界も変わりつつある
《独自》「ハラスメント行為を見たことがありますか」大物タレントAの行為をキー局が水面下でアンケート調査…収録現場で「それは違うだろ」と怒声 若手スタッフは「行きたくない」【国分太一騒動の余波】
NEWSポストセブン
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
皇室に関する悪質なショート動画が拡散 悠仁さまについての陰謀論、佳子さまのAI生成動画…相次ぐデマ投稿 宮内庁は新たな広報室長を起用し、毅然とした対応へ
女性セブン
定年後はどうする?(写真は番組ホームページより)
「マスメディアの“本音”が集約されているよね」フィフィ氏、玉川徹氏の「SNSのショート動画を見て投票している」発言に“違和感”【参院選を終えて】
NEWSポストセブン
スカウトは学校教員の“業務”に(時事通信フォト)
《“勧誘”は“業務”》高校野球の最新潮流「スカウト担当教員」という仕事 授業を受け持ちつつ“逸材”を求めて全国を奔走
週刊ポスト
「新証言」から浮かび上がったのは、山下容疑者の”壮絶な殺意”だった
【壮絶な目撃証言】「ナイフでトドメを…」「血だらけの女の子の隣でタバコを吸った」山下市郎容疑者が見せた”執拗な殺意“《浜松市・ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
連続強盗の指示役とみられる今村磨人(左)、藤田聖也(右)両容疑者。移送前、フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)
【体にホチキスを刺し、金のありかを吐かせる…】ルフィ事件・小島智信被告の裁判で明かされた「カネを持ち逃げした構成員」への恐怖の拷問
NEWSポストセブン
「情報商材ビジネス」のNGフレーズとは…(elutas/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」は“訴えれば勝てる可能性が高い”と思った》 「情報商材ビジネス」のNGフレーズは「絶対成功する」「3日で誰でもできる」
NEWSポストセブン
入団テストを経て巨人と支配下選手契約を結んだ乙坂智
元DeNA・乙坂智“マルチお持ち帰り”報道から4年…巨人入りまでの厳しい“武者修行”、「収入は命に直結する」と目の前の1試合を命がけで戦ったベネズエラ時代
週刊ポスト
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン