3月15日に創立100周年を迎えた自動車メーカーのスズキ。だが、そんな記念の年に世界中を襲った新型コロナの影響をもろに受け、最大の危機を迎えている。果たしてスズキはこの試練を乗り切ることができるのか──。ジャーナリストの有森隆氏がレポートする。
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100年前の第一次世界大戦中の1918(大正7)年から翌年にかけて、スペイン風邪が世界的に流行した。日本では約2300万人の患者と、およそ38万人の死者が出たと記録されている。
戦後恐慌の最中の1920(大正9)年3月15日、鈴木式織機製作所が静岡県浜名郡天神村(その後浜松町、現・浜松市)で設立された。初代社長は鈴木道雄である。
それから100年──。スズキは新型コロナウイルスの直撃を受け、日本やインドで新車販売がガタ減りとなった。インドはスズキにとって最重要市場である。コロナとインドのダブルパンチを喰らったわけだ。100年目の実に重たい試練である。
「日本は完成車の不正問題、インドは市場の回復の遅れがあり、(決算)期末にはコロナの影響があった。色々な問題を抱える中での結果だ」
スズキ社長の鈴木俊宏は5月26日、連結業績をこう総括した。
2020年3月期の連結決算は、売上高が前の期に比べて10%減の3兆4884億円、純利益は25%減の1342億円だった。四輪車の世界販売台数は285万台で14%減った。このうち、インドが18%減と大きく落ち込み143万台。日本は7%減の67万台となった。
同期間の国内の軽自動車の新車販売台数は、ホンダの「N-BOX」が断トツの首位。2位はダイハツ工業の「タント」。ススギの「スペーシア」は3位だが、日産自動車の「デイズ」に並ばれた。スズキの「ワゴンR」「アルト」「ハスラー」の販売台数は前年実績割れ。「販売のスズキの面影はいずこに」(軽業界の重鎮)といわれるような惨憺たる結果を招いた。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、4月に緊急事態宣言が発出され、外出自粛や店舗休業が続くなかで販売が一段と低迷。各社の5月の軽自動車の新車販売台数は前年より半減、8か月連続で減少した。
現在、緊急事態宣言が解除され、販売店に少しずつユーザーは戻りつつあるが、すぐに販売に結びつくわけではない。