妻と子供のことは愛している。それでも──。セックス依存には、家庭、仕事、社会的信用、それらを一度に失うリスクがある。身を滅ぼすことはわかっているのにやめられない、その衝動の正体。
佐々木希(32才)という妻がいながら複数の女性と、時には多目的トイレで事に及んでいたアンジャッシュの渡部建(47才)。「トイレだなんて、考えられない!」という反応が多い一方で、ドキッとしている人も少なくないという。独身の女性A子さん(36才)が話す。
「どうしても気持ちが抑えられなくて、いままで交際した彼と“ここでしたい”とトイレに入ったことが何度かあるんです。彼も受け入れてくれたし、“私はほかの人より少し性欲が強いだけ”と思っていたのですが…。ひょっとして私も、渡部さんの件でニュースになっている『セックス依存症』なんでしょうか」
過去には、クリントン元米大統領、プロゴルファーのタイガー・ウッズ、俳優のマイケル・ダグラスらがセックス依存症だと報じられた。アメリカの性的健康振興協会によると、全人口の3~5%に当たる900万~1500万人にセックス依存症が疑われるという。精神科医の高木希奈さんは「実は『セックス依存症』という病名は存在しません」と指摘する。
「アルコールや薬物の『依存症』は、自己の意思とは関係なく依存性物質を摂取せずにいられない“脳の病気”です。
一方、買い物依存や異性への依存など世間一般的に使われる“依存”は、もともとの性格傾向、ストレス、生活環境、過去のトラウマなどの要因が引き金で依存に陥っている状態を指します。いわゆるセックス依存も同じです。
それらは精神医学的な『依存症』ではありませんが、仕事や家庭、金銭面など日常的・社会的生活に支障が出るようならば、専門の医療機関を受診し、相談するといいでしょう」
◆「自分は必要とされている」という感覚
「セックス依存のメカニズムは男性と女性では違うように感じる」と高木さんが続ける。
「男性の場合は過剰性欲や性癖が要因である傾向が強いですが、女性の場合は幼少期の虐待や親の愛情不足、いじめなど、“人に必要とされている感覚”が不足している人が依存しやすい。セックスをしているときだけしか、相手が自分を必要としている、求めている、優しくされていると感じられないので、繰り返し求めてしまうのです」