小さな気遣いが嬉しく感じる(写真はイメージ)

◆七夕の星形にんじんにモヤモヤした6年前

 母がいまのサ高住に来たのは6年前の6月の末。当時はいまとは別人のように激やせしていた。父が急死し、1年余りの独居の間に認知症が進み、おそらくきちんと食事が摂れていなかったせいだ。

 私には「食べている」と言いながら、丸顔のほおがどんどんこけてしわしわになり、急き立てられるようにサ高住への転居を決めたのだ。

 転居してすぐの頃、食堂で母の食事を覗く機会があった。七夕が近かったからか、ちらし寿司に星形に型抜きされたにんじんが飾ってあるのが目に入った。そのときなぜか私は無性に腹が立ったのだ。

「何これ、子供扱い!? やっぱり施設の食事って…」と心の中で吐き捨てた。

 切羽詰まっていたとはいえ、母も望んだとはいえ、母の日常を奪ったような負い目があった。どうしようもなく気持ちがささくれていたのだ。

「へぇー、気が利いてるじゃない」と、母はつぶやいた。

 いまになって思えば、母は本当にうれしかったのだろう。ご飯とおかずと温かな汁が色とりどりに揃った食事。子供を喜ばせようと苦心したような星形のにんじんに、きっと人の情を感じたに違いない。

 もうすぐ七夕だ。また星が彩る料理が、母を喜ばせてくれるといいなと思う。

※女性セブン2020年7月9日号

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