「韓国に対する厳しい姿勢は、韓国が約束を守らないからだ」とは、北朝鮮消息筋の解説だ。北朝鮮が「口先番長」の文在寅に業を煮やしたというのだ。
なぜ、強硬姿勢の先頭に与正が立つのか。彼女のイメージチェンジは、対韓国政策の劇的な転換を内外に強く印象づけるからだ。韓国にとっての衝撃は、いっそう大きい。南北関係の改善を最大の政治目標に据える文政権に対して、揺さぶり効果は絶大だ。
「何よりも重要なのは、与正が事実上のナンバー2としての地位を固めるための実績づくりだろう」
韓国政府当局者はこのように読み解く。
ベトナム・ハノイで昨年2月に行なわれた正恩とトランプ米大統領による2度目の首脳会談は事実上、決裂した。間もなく、与正は党重要ポストの政治局員候補から外れた。会談失敗の責任の一部を負う辞任だったようだが、今年4月には復活している。
米朝交渉失敗には軍部など強硬派の批判が強いとされる。汚名を返上して国内強硬派の支持を確実にするには、挑発的な対韓国政策を指揮するのが最善の策と判断した面があるに違いない。
正恩の健康不安説と相まって、与正の急浮上については、「後継者」説も一部に指摘される。しかし、韓国政府当局者は「垂簾聴政を念頭に置いている」と推し量る。