金正恩氏はいまだ姿を見せない(EPA=時事)
実名が初めて登場したのは2014年3月。国会にあたる最高人民会議代議員選挙で「党中央委員会責任幹部」の肩書きで登場。同年11月には党副部長の職位で、2018年2月には「党第1副部長」と報じられ、権力中枢の階段を着実に上っていく。
正恩が2018年に入って首脳外交を活発化させると、シンガポール、北京、ハノイに同行。儀典から実務まで取り仕切り、甲斐甲斐しく立ち回る様子がテレビに映し出された。
先の北朝鮮消息筋は「判断力が優れていると聞く。実の兄妹とあって正恩の信頼は格別に厚く、分身のような存在だ」と評する。
2018年2月には平昌冬季五輪開会式に出席するために訪韓し、文在寅大統領らと会談した。「微笑み外交」と国際社会の注目を浴び、韓国では一気に、好感度をアップさせた。
◆正恩ジュニアの摂政
それが最近、文在寅政権を批判する談話を自らの名で相次いで発表した。脱北者を「クズ」呼ばわり。北朝鮮に対話を呼び掛けた文在寅について「むかつく」「鉄面皮」と言い放つ。ソフトイメージから驚くほどの豹変を遂げた。
北朝鮮は共同事務所の爆破について、韓国の脱北者団体が5月に正恩を冒涜するビラを散布したことへの報復だと説く。しかし、ビラ散布は今に始まったことではなく、専門家の多くは「口実に過ぎない」と口を揃える。
南北首脳は2018年9月の平壌会談で、中断している開城工業団地と金剛山観光事業の再開で合意した。両事業は北朝鮮にとって貴重な外貨獲得手段となるはずだったが、合意は具体化しておらず、文在寅政権に対する北朝鮮の不満は大きい。