検討の結果、1頭軸、ヒモを6頭に絞ったとする。組み合わせは15通り。全部のオッズが一目瞭然で、15倍を下回っているのは2組。これが来てもマイナスだから、決然と外す。目的は的中ではなく当てて儲けることだ。
先のダービーや安田記念のように、圧倒的な人気馬がいるときこそ役立つような気がする(馬券、外したけど)。安田記念を振り返れば、いくら穴党とはいえアーモンドアイを絡ませないわけにはいかない。ところが決着の3連複は840円! これじゃ馬券的妙味は塩を入れ忘れた澄まし汁だ。
そこで1番人気馬ではない2頭を狙うワイドに定めた。2番3番人気の組み合わせでも590円。3連複と比べるとこっちの方がいい。これをオッズ投票で確認する。他の候補馬の組み合わせで10倍を超えるものもある。
一方で3連複も狙った。1番人気馬が連を外した場合は高配当ばかりで投入金額を絞ることができ、全体でプラス収支を目論んだのだが…。
別の日の早いレースでは【11】を軸にした3連複20通りを買った。果たしてヒモの2頭がきた! ただし肝心の【11】は着外だった。嗚呼。
パドックを凝視して走る馬を定め、返し馬を経て決断する。勝負はここで完了している。しかし第二段階の「儲かる組み合わせで投票する」が出現すると、第一段階は完璧だと錯覚してしまう。
まさに捕らぬ狸の皮算用なのだった。
●すどう・やすたか 1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。
※週刊ポスト2020年7月10・17日号