午前8時台の通勤ラッシュで混む都営大江戸線の新宿西口駅のホーム(時事通信フォト)

午前8時台の通勤ラッシュで混む都営大江戸線の新宿西口駅のホーム(時事通信フォト)

 旧来の企業と比べて、新興企業は従来のワークスタイルに縛られない傾向が強い。特に、在宅でも仕事をこなせるIT企業は、9~5時といった時間帯に出社している必要はない。そのため、必ず朝に通勤しなければならない理由は乏しい。

 例えば、日本最大のポータルサイトを運営するYahoo! JAPANは、災害のリスクヘッジを考慮し、地方にも拠点を分散している。

 旧来の働き方に縛られないという点では、ドワンゴも同じだ。ドワンゴが2月17日という早い段階から在宅勤務へと切り替えに着手していたことは、IT企業が本領を発揮したともいえる。

「ドワンゴでは、コロナ前から柔軟なワークスタイルを採用してきました。2月17日以前より導入しているチャットツールやビデオ・音声会議ツールといったオンラインシステムを活用するなどして、円滑な業務推進および社員間コミュニケーションの確保をしています。在宅勤務制度を本格導入するにあたり、約3か月半の試行期間でこれらを再確認することになりましたが、特に問題はありませんでした」(同)

 在宅勤務制度を導入するにあたり、ドワンゴは月2万円の在宅勤務手当を新たに支給する。出社の必要性があるときに限り、交通費を実費で清算するとした。

「今回の在宅勤務恒久化は、あくまで働き方の選択肢を増やすことが主眼です。何らかの事情があって、自宅で仕事ができない人もいます。そうした自宅勤務が困難という人には、今後も出社するという働き方を選択できるようにしています」(同)

 現在、ドワンゴで働くスタッフは首都圏の在住者ばかり。新幹線や飛行機を使わなければならないような遠方地に居住しているスタッフはいない。また、都内でも伊豆諸島や小笠原諸島といった離島に居住しているスタッフもいない。

「在宅勤務恒久化によって遠方に移住して、リモートで働きたいという要望が出てくる可能性はあります。現段階ではそうした要望は出ていませんが、検討することになるとは思います」(同)

 コロナの感染拡大で、人口が密集する東京都から地方へと移住する傾向が強まるとの予測はあちこちから指摘されていた。しかし、蓋を開けてみれば、コロナの感染拡大がもっとも不安視されていた5月の時点で東京都の人口は増加し、史上最多となる1400万人を突破している。6月は1000人ほど減少したが、東京一極集中の構図は変わっていない。

 そこには「コロナで人が密集する東京を避けたい」という気持ちが強くなる一方で、「コロナで失業しても新しい職がすぐにみつかると東京がいい」と考える人がたくさんいるからだ。それぞれは相反した考えのようにも思えるが、そうせざるを得ないのが現実なのかもしれない。

 ドワンゴが打ち出した在宅勤務制度恒久化は、他社にも大きな刺激を与える可能性を秘めている。追随する企業が続出すれば、働く場所と住む場所はリンクしなくなる。

 それは、痛勤と形容されるほど混雑した通勤電車を過去のものにするだろう。果たして、追随する企業は現れるのか?

ぎゅう詰めの車内に通勤客を押し込む国鉄職員。1967年新宿駅(時事通信フォト)

ぎゅう詰めの車内に通勤客を押し込む国鉄職員。1967年新宿駅(時事通信フォト)

関連記事

トピックス

交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
身長145cmと小柄ながら圧倒的な存在感を放つ岸みゆ
【身長145cmのグラビアスター】#ババババンビ・岸みゆ「白黒プレゼントページでデビュー」から「ファースト写真集重版」までの成功物語
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「部屋に盗聴器が仕掛けられ、いつでも悪口が聞こえてくる……」被告が語っていた事件前の“妄想”と父親の“悔恨”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン