国際情報

黒人が「こまりますだ!」 翻訳文に見える日本人の差別意識

黒人描写に問題が(『風と共に去りぬ』より dpa/時事)

 キャラクターや性別、年齢などの類型にあわせてドラマやマンガなどで使用される話し言葉を「役割語」を呼ぶ。翻訳文学にもたびたび役割語が使用されているが、そこに差別意識はないのか。評論家の呉智英氏が、『風と共に去りぬ』で黒人奴隷の話し言葉として使用されている役割語に潜む意識について考察する。

 * * *
 五月末アメリカで偽札使用容疑の黒人男性が拘束される際、過剰な制圧方法によって死亡した。既に手錠がかけられていたにもかかわらず、警察官によって地面に転がされ頸部を膝で圧迫された結果死んだのである。この黒人男性は窃盗や強盗の前科があるとはいうものの、これが白人男性であればこのように過剰な制圧はされなかっただろう。

 日本でも最近の事件・事故に関して“上級国民”には警察の扱いが甘いという声が出ている。これが本当かどうかはともかく、アメリカでは黒人が“下級国民”として警察に苛酷な扱いを受けている。黒人差別の現実である。

 今回の事件を機に全米で黒人差別への抗議運動が起こり、一部では暴動・略奪まで発生している。こうした「運動の広がり」は、さらに隣接分野にも飛び火した。

 六月二十六日付朝日新聞は「『風と共に去りぬ』配信停止 時代の風」と題して、この映画に批判が起き「解説動画付きで」配信するようになったことを報じている。「奴隷制を美化 黒人死亡事件で差別抗議」というわけだ。

 この飛び火に、さらにもう少し油を注いでみようか。金水敏(きんすいさとし)という国語学者がいる。

「役割語(やくわりご)」という概念の提唱者で、関連する著作も多い。役割語とは、人物の職業・所属などを象徴する言葉使いで、ほとんどは架空のものであるが、ドラマやマンガなどに頻繁に登場する。例えば、博士は「わしは博士じゃ」などと言う。金水は講演会などで、僕は国語学で博士号を取ってますが、「わしは博士じゃ」などと言ったことは一度もない、と話す。確かにそうだ。こういう言葉は、人物の役割を表現するために作られた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
『あんぱん』“豪ちゃん”役の細田佳央太(写真提供/NHK)
『あんぱん』“豪ちゃん”役・細田佳央太が明かす河合優実への絶対的な信頼 「蘭子さんには前を向いて自分の幸せを第一にしてほしい。豪もきっとそう思ったはず」
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/五十嵐美弥)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン