ライフ

鰻料理を扱う店が約60軒ひしめく成田山新勝寺参道の名店

遠来の参拝客をもてなす成田山名物

 JR成田駅、京成成田駅と成田山新勝寺を徒歩約10分で結ぶ約800メートルの参道。そぞろ歩けば、香ばしく焼かれた鰻の香りが漂い、食欲を誘う。

 店先で職人たちが真剣な眼差しで何度も手返しをしながら、次々と艶やかな狐色に焼き上げていく。鰻から落ちる脂がジュッと音を立て、蒲焼のいい匂いが煙にのって参拝客たちを包む。こんな光景と香りに出迎えられたら、誰しも誘惑には勝てないだろう。

表参道には鰻屋のほか、色々な店が立ち並ぶ

 江戸時代もきっとそうだったに違いない。古くから「成田のお不動さま」として庶民の信仰を集めてきた成田山新勝寺の門前町は、元禄時代に入ってから成田詣がブームになったことをきっかけに、江戸から物見遊山も兼ねて行ける行楽地として賑わいをみせてきた。

大本山成田山新勝寺

境内にある「額堂」は国の重要文化財

成田山新勝寺境内の出世稲荷。名刺を貼って出世を願う

 印旛沼と利根川に近い土地柄、川魚が豊富に獲れ、昔から鰻料理が盛んに食べられていた地域でもあり、江戸から数日間歩いて成田山を訪れる参拝客を旅館などが栄養価の高い鰻料理でもてなしてきた歴史を持つ。その名残もあり、現在も鰻料理を扱う店や旅館が参道に約60軒ひしめく。

 とりわけ人だかりができているのが、明治43(1910)年創業の鰻専門店「川豊本店」。かつて旅籠として使われていた建物は、国の登録有形文化財に指定されている。「割きたて、蒸したて、焼きたて」にこだわり、店頭の土間では鰻一筋50年を超える板長が熟練の技で生きた鰻をさばいていく。

 関東の鰻の調理法は関西と異なり、背開きにし、白焼きの後に蒸す工程が入る。国内各地から厳選した鰻1.5尾を使う「特上うな重」は、味もボリュームも満点。30分以上蒸した後、創業時から守る一子相伝の薄甘口のタレで焼き上げた身は、ふわふわで口の中でとろけていく。並んでも味わいたい逸品だ。

参道に面する老舗・後藤だんご屋の「やきだんご」「かき氷」は大人気

●川豊本店 千葉県成田市仲町386

川豊本店

【営業時間】10時~17時(L.O.)【定休日】無
特上うな重(おしんこ付き)5100円 きも吸150円

◆撮影/中庭愉生、取材・文/上田千春

※週刊ポスト2020年7月24日号

関連記事

トピックス

大谷と真美子夫人の出勤ルーティンとは
《真美子さんとの出勤ルーティン》大谷翔平が「10万円前後のセレブ向けベビーカー」を押して球場入りする理由【愛娘とともにリラックス】
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(秋田県上小阿仁村の住居で発見されたクマのおぞましい足跡「全自動さじなげ委員会」提供/PIXTA)
「飼い犬もズタズタに」「車に爪あとがベタベタと…」空腹グマがまたも殺人、遺体から浮かび上がった“激しい殺意”と数日前の“事故の前兆”《岩手県・クマ被害》
NEWSポストセブン
「秋の園遊会」でペールブルーを選ばれた皇后雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《洋装スタイルで魅せた》皇后雅子さま、秋の園遊会でペールブルーのセットアップをお召しに 寒色でもくすみカラーで秋らしさを感じさせるコーデ
NEWSポストセブン
チャリティーバザーを訪問された秋篠宮家・次女の佳子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《4年会えていない姉への思いも?》佳子さま、8年前に小室眞子さんが着用した“お下がり”ワンピで登場 民族衣装のようなデザインにパールをプラスしてエレガントに
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)。千葉のビジネス専門学校へ入学しようと考えていたという
「『彼女がめっちゃ泣いていた』と相談を…」“背が低くておとなしい”浅香真美容疑者(32)と“ハンサムな弟”バダルさん(21)の「破局トラブル」とは《刺されたネパール人の兄が証言》
約2時間30分のインタビューで語り尽くした西岡さん
フジテレビ倍率2500倍、マンション購入6.2億円…異色の経歴を持つ元アナ西岡孝洋が明かす「フジテレビの看板を下ろしたかった」本当のワケ
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)。アルバイトをしながら日本語を学んでいた
「ホテルで胸を…」11歳年上の交際相手女性・浅香真美容疑者(32)に殺害されたバダルさん(21)の“魅力的な素顔”を兄が告白【千葉・ネパール人殺害】
佳子さまの“着帽なし”の装いが物議を醸している(写真/共同通信社)
「マナーとして大丈夫なのか」と心配の声も…佳子さま“脱帽ファッション”に込められた「姉の眞子さんから受け継ぐ」日本の伝統文化への思い
週刊ポスト
医師がおすすめ!ウイルスなどの感染症対策に大切なこととは…?(写真はイメージです)
感染予防の新常識は「のどを制するものが冬を制する」 風邪の季節に注意すべき“のど乾燥スパイラル”とは?
NEWSポストセブン
「秋の園遊会」に出席された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《秋の園遊会》 赤色&花の飾りで“仲良し”コーデ 愛子さまは上品なきれいめスタイル、佳子さまはガーリーなデザイン
NEWSポストセブン
真美子さんが“奥様会”の写真に登場するたびに話題に(Instagram /時事通信フォト)
《ピチピチTシャツをデニムジャケットで覆って》大谷翔平の妻・真美子さん「奥様会」での活動を支える“元モデル先輩ママ” 横並びで笑顔を見せて
NEWSポストセブン
クマによる被害が相次いでいる(左・イメージマート)
《男女4人死傷の“秋田殺人グマ”》被害者には「顔に大きく爪で抉られた痕跡」、「クラクションを鳴らしたら軽トラに突進」目撃者男性を襲った恐怖の一幕
NEWSポストセブン