同じビールでも趣向を凝らして、ここ数年ブームになっているクラフトビールをセレクトしてみるのも面白いだろう。
小規模な事業者による少量生産のクラフトビールは、職人が様々な原材料を吟味し、丹精込めて作りだした逸品ばかり。全国400を超える醸造所から生まれるクラフトビールは、色や香り、味のバリエーションがじつに豊富で、食レポならぬ“飲レポ”のネタにはもってこいだ。
ただでさえ世代間コミュニケーションが取りづらくなっている時代、こんなユニークなクラフトビールも開発されている。
商品名は「人生醸造クラフト」──。醸造したのは埼玉県川越市の協同商事 コエドブルワリーだが、開発にあたりビールの決め手となる「色・香り・味」の分析を担当したのは、NECだ。同社の最先端AI(人工知能)技術群「NEC the WISE」が、20~50代の4世代の特徴を分析し、それぞれ数値化したうえでクラフトビールの深い味わいに落とし込んだ。
AI解析のためのデータを提供したのは、出版社の小学館。同社が過去40年間に発行した雑誌のうち、『Can Cam』や『Oggi』といったファッション誌や『DIME』などの情報誌計15誌、4000冊の画像・文字データから、各世代が好んだトレンドカラーやトレンドワードを抽出。それがビールの色や香り、味に活かされた。
そうして出来上がった世代ごとの「人生醸造クラフト(4種類)」ビールは、じつに個性的だ。
【20代・PINK/味:サワー】デジタルネイティブ世代。淡いピンク色が特徴で、アルコール度数は控えめ。フルーティーさを前面に押し出すことで、カジュアルに味わえる。
【30代・BLUE/味:ドライ&ビター】ミレニアル世代。20代に流行したデニムを色で表現。トロピカル感がありながら、レモンピールの酸味やホップの苦味も加わり、独特な価値観を持つこの世代にマッチしている。
【40代・YELLOW/味:スイート】団塊ジュニア世代。就職氷河期など激動の時代を生き抜いた世代の人生を複雑な香りで表現。酵母を取り除くことでクリーンな味わいも楽しめる。
【50代・RED/味:スイート&ビター】バブル世代。鮮やかな赤色で、アルコール度数も高めの7%。すっきりした味わいと芳醇な後味を同時に楽しめる。
AIとビール職人が作り上げた“人生の味”。まさにNECが目指す「世代間コミュニケーションを促進する」ツールとして注目を浴びそうだ。中身のビールカラーを配したオシャレなラベルも、オンライン飲み会で映えるはず。
ただ、オンライン飲み会の落とし穴ともいえるのが、夜遅くまでダラダラ続けることによる過剰飲酒だ。キリンビールの調査でも、オンライン飲み会を経験したことがある人の3割以上が、通常の対面時と比較して飲酒量が増えることが分かっている。
改めてメンバー同士の人生を振り返り、語り合うのもいいが、酔い過ぎて“寝落ち”しないよう気をつけたい。