だが、こうしたことが必要のない勤め人は果たしてSNSをやる必要があるのだろうか。自分の近況を伝えたい、そして反応を得たい、という欲求は分かる。そこでコミュニケーションが開始するのは良いことだ。
これは年賀状的なやり取りではあるものの、年賀状の場合は「自分と相手以外は見られない」「炎上することはない」という特徴がある。実名制が原則のフェイスブックの場合は、知り合いないしは知り合いの知り合いだけが見て意見を書ける、といった側面はある。
だが、相手が酔っ払っていてあなたの書いた意見に対して異議を呈し、それに応酬した場合は、そのやり取りは全「ともだち」に筒抜けとなりドン引きされるか、顰蹙を買う。
昨今、アメリカでは、BLM(黒人の命が大切)運動に対して「すべての人間の命が大事」とSNSで述べると差別主義者認定されて解雇される例も出てきている。
もはや、SNSでの発言は一人の人間の人生を完全に狂わせる。ポリティカル的に正しいとされる意見を言う以外は糾弾され、職まで失う。
黒人のYouTuberが「黒人はアメリカ人の13%だが、全殺人の52%が黒人によるもので死者の48%が黒人(中略)黒人同士が殺し合っている」と情報発信。これが黒人以外の「良識派」から反発を受けた。元々寛容なはずだったリベラル派がこうした動きをアメリカでしているわけだが、日本でも同様の動きに発展する可能性はある。もう発言をしないに限る。
●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など
※週刊ポスト2020年7月31日・8月7日号