上記のアイドルたちは、あくまで自身の持つ個性のひとつとしてセクシュアルティを捉えているようだ。そんな自然体な姿勢がなんとも現代らしい。
『「百合映画」完全ガイド』(星海社新書)の執筆者の一人である社会学研究者・中村香住氏は、自身もレズビアンであり、長年のアイドルファンでもある。中村氏は、アイドル業界が抱える問題点をこのように指摘する。
「アイドルは、同性のファンも増えてきているとはいえ、まだまだ『異性向け』のコンテンツとされがちで、実際、異性愛主義的な価値観で運営されているグループがほとんどです。例えば、アイドルの世界には『恋愛禁止』の風潮がありますが、これも実質的には『異性との恋愛を禁止する』という意味として機能しています。これでは、世の中に今でも根強く存在する『異性愛こそが普通で正常だ』という信念が、アイドルコンテンツを通じてより強化されてしまい、同性愛差別につながりかねません。アイドル自身のセクシュアリティも、無前提に異性愛だと想定されています」
中村氏は、ファンや運営の考え方を含め、アイドルシーン全体が異性愛を前提にしていることを問題視している。アイドルメディアでは当たり前の「好きな異性のタイプは?」といった質問などによって、旧来の価値観が再生産されてしまうことは十分あるのだ。だからこそ中村氏は、セクシュアルマイノリティであることを隠さないアイドルたちを肯定的に受け止めている。