日本最大の暴力団の分裂劇から5年、「3つの山口組」が並び立つ構図が崩れようとしている。泥沼化する抗争はヤクザ社会、そして一般社会にどんな影響をもたらすのか。暴力団取材のツートップ、溝口敦氏(ノンフィクション作家)と鈴木智彦氏(フリーライター)が語り合った。
鈴木:先に神戸山口組を離脱した絆會には、解散の動きが報じられています。
溝口:トップの織田絆誠組長が解散を唱えていたのは間違いないが、7月14日の緊急執行部会で解散が撤回されました。幹部の中には、今のままでも絆會は生き残っていけるという反対意見が多く、織田組長も納得した。
鈴木:織田組長は、生き残るために暴力団とは名乗らないようにする、という考え方ですよね。
溝口:彼は、反社会勢力と見られたままでは暴力団は生き残っていけないと思っている。反社会的な存在ではなく、かつてのような街の世話役としてのヤクザという存在に戻したいと言っている。そのための解散なんだと。
鈴木:理屈としては分かりますが、警察は暴力団の指定を解くはずがない。
溝口:確かに難しい。それに、いくら自分たちで解散した、組員ではないと言っても、警察には辞めた組員でも5年以内は組員同等とみなされるという“5年ルール”があって、銀行も保険もそれに従うから口座の開設もできない。それを逃れるのは困難でしょう。