歌舞伎町のホストクラブなどに新型コロナウイルス対策を呼び掛けに回る新宿区の吉住健一区長(左から2人目)ら(時事通信フォト)

歌舞伎町のホストクラブなどに新型コロナウイルス対策を呼び掛けに回る新宿区の吉住健一区長(左から2人目)ら(時事通信フォト)

 緊急事態宣言が発令されるころは、パチンコホールが責められた。その後、日本中が静まりかえっていた5月が過ぎ、6月になると新宿区の呼びかけで集団検査を受けた歌舞伎町のホストクラブで集団感染が起きていたことが発覚。記者会見で小池百合子・東京都知事は「ホストクラブ」で発生と繰り返し、ホストやホストクラブが非難されるようになった。感染が発覚した彼らの多くは症状が出ていない、もしくはごく軽症だったので、集団検査を受けなければ新規感染者に数えられないままだった可能性も高い。感染症への対応が積極的な地域なのだから、真面目に向き合っていると世間からも信用されると期待したが、現実はそうではなかった。

 緊急事態宣言さえ解除されれば、という丸田さんの淡い期待はもはや消えたに等しい。海の日を含めた7月の連休前も、客は戻らなかった。4月から3ヶ月間、なんとか歯を食いしばってきたが、もう前を向く気力も無くなった。

「もういいです。補償がン十万円とか、バカにされているような気持ちです。税金だってしっかり払ってきたのに、これかと。恨み言をいうのは性に合わないのですが、今回ばかりは流石にね。恨みしかない。いずれは飲食業界そのものも攻撃されるだろうし、やり続ける自信がない。飲食は二度とやらないでしょう」(丸田さん)

 同じく新宿歌舞伎町の飲食店から消えているのは、客だけではない。そう話すのは、東京都内の不動産会社役員だ。

「第二波の到来か、新宿はコロナの巣だ、なんてマスコミで言われて、流石に歌舞伎町の飲食店経営者も諦める人が増えました。4月から3ヶ月間はなんとか持ちこたえたのに、もう無理だと辞めていく。借金で3ヶ月を乗り越えた店の中には、夜逃げするような経営者も出始めています。みんな期待していたからこそ、こういう事態になって、悪者のように言われて、精神を病んでしまった人もいる。新宿はゆっくり死んでいっているかのよう」(都内の不動産会社役員)

 緊急事態宣言下でもこっそり営業を続けたツケが、ホストや夜の街に回ってきたのは自業自得かもしれない。だが、何も保障されないから生きるために必死で闇営業を続けた、というのは十分に理解できる「理由」だ。ただ世間は、やりどころのないコロナへの恨みを、ホストにぶつけ夜の街にぶつけ、最後は新宿が悪いとまで言い始めた。新宿が死ねば、次は渋谷が悪い、六本木が悪いとなるだろう。夜の街が死ねば、今度は飲食店やサービス業に攻撃の矛先が向かうはず。コロナをなんとか乗り越えようとしている人類同士が、八つ当たりでお互いの首を絞め合うばかり。本当に取り組むべきは何なのか、議論すべき問題はどこにあるのか、わざと的を外すようなことばかり繰り返している。このままでは、いろいろなコトが取り返しがつかなくなるのではないか。

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