国内

「うがい薬」買い占めに走った高齢者は指弾されるべきなのか

「ポビドンヨード」を含むうがい薬の品切れを知らせるドラッグストアの看板(時事通信フォト)

「ポビドンヨード」を含むうがい薬の品切れを知らせるドラッグストアの看板(時事通信フォト)

 春先からこれまで、新型コロナウイルスに関係した買い物行列が何度も発生した。行列の先にあった品物は、すべてがオークションやフリマアプリに出品されているわけではない。俳人で著作家の日野百草氏が、今回は、8月4日昼過ぎに行われた吉村洋文・大阪府知事の会見での発言をきっかけに、ポビドンヨード成分を含むうがい薬、日本でよく知られている代表的な商品名だと「イソジンうがい薬」を高齢者が買いに走った理由についてレポートする。

 * * *
「ビニール袋よこせよ、こんだけ買って金取んのかよ」

 なにげない日常の中で、私たちは時としてその瞬間を目撃することがある。意図せずして、事件の瞬間に立ち会うことがある。1999年のションベン横丁火災では路上で酔いつぶれていたら燃えていた。2001年には松屋で定食を食べていたら歌舞伎町のナイタイビルが燃えていた。そしていま、2020年8月4日、15:30くらいか、私の知らないところで騒動は起きていた。

「すいません、決まりなんです、申し訳ない」

 多摩の田舎の小さなドラッグストア、私の知り合いの薬剤師があやまっている。個性的でいかつい顔のおっさんだが、いいこと悪いことこっそりいろいろ教えてくれる心優しい薬剤師だ。たまたま今日が私の通院日、薬を貰いに来たら、ちっちゃい爺さんがビニール袋をくれとわめいている。かわいそうに、私のお気に入りの薬剤師になんてことを。レジには大量のイソジン。

「こんだけ買うんだからさ、ケチケチすんなよ」

 そう、私はイソジンを買い占める爺さん「イソ爺」(とっさに思い浮かんだ呼称、本稿は老人ばかり登場するので便宜上、彼のみ「イソ爺」とする)と化した老人と遭遇してしまった。薬剤師には悪いが、うっかり脳内でこんな呼称を戯れてしまうほど滑稽な光景だ。

「手で持てないよ、こんなにたくさん」

 その爺さんは大量のイソジンを買ったはいいが持ちづらいから袋をよこせと訴えている。7月1日からレジ袋が有料化されたことを知らないはずはないが、爺さんとしてはたくさん買ったからレジ袋はタダにしろという理屈だ。それにしてもなぜイソジン。と思ったら別の婆さんもイソジン同様のポビドンヨード系うがい薬を手に持っている。

「なにがあったんです?」

 爺さんは交渉の最中なので婆さんに聞いてみる。カラフルな色使いの服でおしゃれな婆さんだ。

「さっきテレビで言ってたのよ、コロナにうがい薬が効くって」

関連キーワード

関連記事

トピックス

2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト