「ポビドンヨード」成分が含まれたうがい薬を紹介する吉村洋文大阪府知事(右)(時事通信フォト)

「ポビドンヨード」成分が含まれたうがい薬を紹介する吉村洋文大阪府知事(時事通信フォト)

 そういえばコロナウイルス騒動端緒の2月には紅茶のポリフェノールが感染力を無力化するとか、納豆が効くとかわけのわからないデマが飛び交った。3月10日には消費者庁がコロナに効くと便乗した30業者46商品に対して改善命令を出すに至った。マイナスイオン発生器やイオン空気清浄機でコロナが死滅とか、首にかけているだけでコロナを除菌とか無茶苦茶な代物も槍玉に挙げられていたが、オカルトもどきに関わらず、不安に乗じてそれなりに売れていたようだ。未知のウイルスに対する恐怖、こういったデマは仕方のない部分もあるが許せない。そんなこと言っているのはどこの番組だ。

「どこってわけじゃなくて、大阪の偉い人よ」

 嫌な予感がする。また、根拠が不明な話を情報番組が取り上げたのか。スマートフォンでニュースサイトを開いてみる。私は苦手なのでスマホにSNSのアプリは入れていない。ニュースでは、吉村洋文大阪府知事が「うそのような本当の話」としてポピドンヨードの成分を含んだうがい薬でコロナの陽性者が減少すると会見で発表していた。

 そんなこと言っていたのは、なんと日本維新の会副代表にして大阪維新の会代表代行、第20代大阪府知事の吉村洋文その人だった。松井一郎大阪市長と大阪はびきの医療センターの研究者も同席している。嫌な予感は当たった、また吉村知事か。それでも自治体の有名な長、高齢者が信じるのも無理はない。

「あの人、あんなにいっぱい買ってずるいわよね」

 婆さんが私に耳打ちしてくる。近すぎて聞こえるだろうに。もちろんあの人とは、さっきから揉めているイソ爺のことだろう。それにしてもイソ爺ちょっと買い過ぎ、風俗店でも始めるつもりか。気がつくと婆さんの他にも3人がポビドンヨード系うがい薬を持っている。みんなイソ爺ほどじゃないがそれなりの量を手にしている。棚に目をやればあと数個で完売だ。そしてみな高齢者である。

「おい他の人の分も残せよ」

 後ろに並んだ別の爺さんがイソ爺に文句を投げる。小さなドラッグストアはもうめちゃくちゃ、私は併設の調剤薬局に用があるだけだ。調剤の間、揉め事にまきこまれたくないので外に出て待つことにする。外は熱くてマスクなんかしてられないほどだが仕方がない。

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