この日の夜、吉村知事は「また吉村がおかしなこと言い出してるとネット上の大批判がありますが、構いません」「新薬でもなく、昔からあるうがい薬、試す価値はあると思ってます」とTwitterを更新した。科学的な内容が正確に伝わるよう訴えるよりも、開き直りのような強弁に字数を費やす。これでは、迷惑系ユーチューバーと変わらない。翌日5日も「予防効果があるということは一切ないし、そういうことも言ってない」「予防薬でも治療薬でもない。感染拡大防止には寄与」「うつすリスクが高い人はぜひ参考にしてほしい」など二転三転、自治体の長として、もっとも優先したいことは何なのか不明な言動を繰り返している。「ぼくが感じたことをしゃべり、『それは間違いだ』と言われたら、ぼく自身、言いたいことが言えなくなる」というポエムまで記者に向かって披露した。これで45歳、同じ団塊ジュニアとして本当に申し訳なく思う。

 こうした為政者のエビデンス(根拠)なき無責任な発言こそが人心を荒廃させ、すでにコロナを克服した国々の後塵をまたぞろ拝する羽目になる自覚が知事にあるのだろうか。東京都もそうだが、国から投げっぱなしにされた都道府県の混乱と力量不足の露呈が止まらない。それはそのまま、止まることのない全国への感染拡大に繋がっている。

●ひの・ひゃくそう/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。ゲーム誌やアニメ誌のライター、編集人を経てフリーランス。2018年、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。2019年、著書『ドキュメント しくじり世代』(第三書館)でノンフィクション作家としてデビュー、『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)上梓。近刊『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社)寄草。

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