さらにA氏は、メールに示されたリンク先をコピペして、それを検索してみた。
「DMに示されたリンク先がフィッシングサイトだったら、“このリンク先には気をつけろ”というサイトがあるはずだと思いましたが、それもなかった」(A氏)
様々なクロスチェックの結果、「DMは偽物」との確証は得られなかった。一方で「DMは本物」であることを示す証拠もなかったが、不正だという証拠が出ないうちに、いつしかA氏は警戒心を失い、前のめりになっていた。
「認証バッジを得るにはインスタグラムに申請する必要があることは知っていましたが、その時はテンションが上がって、“向こうから声がかかるレアケースもあるんだ”と思い込みました。今にして思えば、10万人以上のフォロワーがいることから、“限られたものに与えられる特権なのだろう”との驕りが心の底にあったのかもしれません。“俺を見つけるのが少し遅かったんじゃないの、インスタさん”という気持ちすらありました。
それまでにも、何度か『認証バッジをあげるからお金を払ってください』という類のDMが来て、その度に詐欺メッセージとして処理していたので、何が来ようが自分は騙されないという自信もありました。届いたDMの内容を何重にもチェックしたうえ、認証バッジをもらえるというテンションと、自分は騙されないという過信が重なって、“このDMは本物だ。一刻も早く認証バッジをゲットしよう”と思い込んでしまいました」(A氏)
ハッカーは「欲」につけこむ
A氏はDMにあったリンク先をクリックし、出てきた画面の指示に従ってインスタグラムのアカウント名とパスワードを入力した。間もなく、スマホに2段階認証のパスワードとなる数字がショートメッセージで送られてきたので、迷うことなく入力した。
だがその後には何の指示もなく、画面はそのままで次の画面に切り替わることもなかった。妙な静寂の中で「おかしいな……」との不安感に襲われたA氏はいったんブラウザを閉じてスマホを再起動し、改めてアカウント名とパスワードを入れてインスタにログインを試みたが、何度やってもエラーになった。「あの時は血の気が引きました」とA氏が振り返る。