コロナによって長期間にわたるストレスに晒されている人が多いためか、陰謀論に傾倒する人は特殊な状況にある人たちだけではない。一年前なら、そんなものには見向きもしなかったであろう普通の人たちが吸い寄せられている。
沖縄県内で飲食店を営む森野ユウジさん(仮名・40代)は「新型コロナウイルス」の正体について、アメリカが中国を陥れるために作った生物兵器であるとSNSに書き込んだところ、一ヶ月間で500を超える「いいね」を受け取り、興奮していた。
「ずっとおかしいと思っていたんですけど、とある信頼できる人の有料セミナーを受けて自分なりの解釈をSNSに書いたところ、多くの人の賛同を得ることが出来ました。やはりウイルスはアメリカの陰謀であり、日本人、アジア人は騙されてはいけないんです。このことは自民党や総理大臣も当然知っているでしょうから、国民は正しい判断をしないとなりません」(森野さん)
ネット上で有料会員サロンを開設する人物の受け売りを、検証することもなくSNSに書き込んだところ多くの反応を得られたことで、受け売り自体を「真実である」とより強固に信じてしまっていた。森野さんの書き込みに賛同する人たちの中にも、森野さんの受け売りを独自解釈しSNS上で披露し、事実でないことや検証されていないことがどんどん「真実性を帯びたかのように」拡散していくのである。
思考停止や極端な依存体質は、ウイルスに犯されそのるよりも恐ろしい。陰謀論を信じるがあまり真実は見えにくくなり、自身の置かれた環境は余計に悪くなってしまう。だが、陰謀論を巧みに操る人々は「有料」の様々なものを提供しており、さらに情報が欲しいなら追加料金が必要な何かへ誘導する。世界を、自分の人生を混乱させる原因を知ったという喜びは、実は陰謀論などちっとも信用していない誰かの利益に貢献しているだけなのだ。