「ご当地ガールズコレクション」に登場した大阪市の天神天満花娘(写真/オマツリジャパン提供)
全国8つの祭りが体験できるオンライン祭り
Zoomを活用したオンライン祭りも実施している。7月に飲料大手のキリンビールと行った『新のどごし〈生〉オンラインまつり』では、Twitterによるライブ配信で『青森ねぶた祭(青森県)』や『東京高円寺阿波おどり(東京都) 』のお祭り団体がパフォーマンスを披露したほか、踊りをレクチャーしたり、Zoomで全国の参加者と「総踊り」を行う初の試みも行った。
「Zoomは、画面上に最大25人までランダムで表示されます。ページをめくればまた別の25人が映り、自分が躍っている姿も他の参加者が踊っている姿も見ることができて、オンラインでも祭りの一体感を作ることができました。CMキャラクターである俳優やタレントも参加し、太鼓を叩きながら一緒に踊ったこともあって、約70万人以上の方に視聴して頂きました」
7月と言えば、緊急事態宣言解除後コロナの感染が再び拡大し始めた頃。Zoomでのオンライン祭りに参加した30代会社員の島津真紀子さん(仮名)はこう話す。
「家で盆踊りをしたのは初めてでしたが、自粛生活で沈みがちな気持ちも太鼓や笛の祭囃子で気分が上がりましたし、ストレス解消にもなりました。リアルなお祭りだと、踊りを間違えると恥ずかしいという気持ちから消極的になりがちですが、Zoomなら多少間違えても恥ずかしくありません。周囲の目を気にすることなく思い切って踊れました」
この夏のオンライン祭りの集大成とも言えるのが、8月15日に行った『おうちでお祭りさわぎ!オンライン夏祭り2020』だ。「阿波おどり」(徳島県)や「エイサー」(沖縄県)、「泉州音頭」(大阪府)など、全国8つの夏祭りが体験できるイベントを約6時間30分にわたってYouTubeなどで生配信した。
「全国からお祭りを集められたのも、オンラインだからこそ。各地の祭りや踊りを見て学んで体験できるほか、地域のPR対決を行った「ご当地ガールズコレクション」や最新の浴衣の世界を知れる企画など、祭り以外の楽しみも豊富なイベントになりました。
『皆で踊ろう!エイサー』は、太鼓を鳴らしながら、足を高く上げるなどのダイナミックな演舞に引き込まれる視聴者が多く、『エイサー格好良かった!』というコメントが目立ちました。阿波おどりと牛深ハイヤ祭り(熊本県)が一緒に踊り教室を開催する『踊り教室 阿波踊り×牛深ハイヤ』は、有料コンテンツでしたが約50名が参加し、双方の共通点や踊りのルーツを学ばれていました。『楽しみながら覚えられてその場で実践できる。コロナが収束したら絶対現地に行って踊りたい』と好評でした」(加藤さん)
各地に中継を繋ぐなどの苦労が実り、再生回数は2万1000回以上を記録。大盛況となった。ただ、オンライン祭りは、大勢の人たちが一つの場所に集まって体感できる熱気や一体感といった醍醐味を完全に再現できるものではない。
「オンライン祭りは、実際の祭りの熱量や一体感と比べるとどうしても迫力が劣ります。そのため、今後は画質や音質、通信環境を整備したり、映像の撮り方や見せ方、企画内容を磨くことで改善していくことが必要になるでしょう。ただ、オンライン祭りは、小さな子供がいる人や、足腰が弱い人、遠くて物理的に行けない人など、これまで事情があって参加ができなかった方も気軽に参加できるというメリットもあり、祭りの価値を更に高める選択肢として、将来的にはリアルな祭りと両立していけると思っています」(加藤さん)
取材・文/小山内麗香