「当時の大人は教育程度も低く、情報源もなかった。みんな貧乏で税金を払うこともないから、いまのように自分たちのお金を使って代表者がどう動くかという意識もなかった。生活に追われながらお上に従うだけだったのです。
しかし終戦後、私は新制中学で民主主義を徹底的に叩き込まれた世代。主権在民、基本的人権の尊重。政治は生活そのものです。いま、政治の中心に戦争体験者がいなくなり、“戦争はダメ”が観念論になりつつあるのが心配です」
人の発信を読むことからでいい。感じることが大切
最近は80代、90代でSNSを楽しむ人も増えてきた。ほかの世代との新たな接点だ。
「昔なら作家やジャーナリストにでもならない限り発信するチャンスはありませんでした。でもいまは、個人で気軽にできちゃういい時代。私がツイートするのは、自分が経験したことや世の中に対して思うことを、やはり伝えておかなきゃと思うから。
戦争体験も、いろいろな経験をしている人がいるはずだから、発表できずにいるとしたら本当にもったいないわ」
とはいえ、パソコンやスマホもハードルは低くない。
「周りの家族も、使い方を一から教えようとしちゃダメ。まずメールやツイッターをワンタッチで読めるように設定して渡すのです。ツイッターではぜひ私をフォローしてね(笑い)。私は毎日の食事の写真や日常のことをツイートして、たくさんのフォロワーさんと会話していますし、子供世代の40~50代の人が相談のコメントをくれたりもします。これを読んで、人はこんなことを考えているのかと、何かを感じることに意味がある。
そして自分も参加して何か発信したいと思ったときが入力方法などの覚えどき。人との会話の中にいることが、いまの高齢者には必要なのです」
【profile】
溝井喜久子さん●1934年埼玉県生まれ。お茶の水女子大学理学部卒。高校の教員を務めた後、結婚を機に26才で専業主婦に。2010年ツイッターを始め、日々の食事、戦争体験、社会の変遷、嫁姑・高齢者問題などを毎日ツイート。フォロワーは40~50代から同年代まで約9万人。5年前、夫に先立たれていまはひとり暮らし。著書に『何がいいかなんて終わってみないとわかりません。』(KADOKAWA)など。
■撮影/菅井淳子
※女性セブン2020年9月3日号