「同条の規定に従えば、現在でも、飲食店が私有財産である営業権を放棄し、営業自粛して感染拡大を防ぐという公共のための行為を行なえば、国は正当な補償をしなければならない。本来は、請求されれば国会を開いて補償予算を組まなければならない。しかし、安倍政権は憲法を無視しているから、憲法を根拠に補償を要求するだけでは動かないでしょう」
そこで、橋下氏が提起したように飲食店などが営業自粛要請を拒否して深夜営業を宣言し、補償を求めるネットデモを行なう。演劇や音楽など芸能エンタメ業界もイベント自粛に追い込まれながら、事実上の無補償に置かれている。仕事が減った芸能人などにも「#休業補償」などのハッシュタグで参加を呼びかける。
その際、武器になるのは憲法17条の〈何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる〉という規定だという。
「政府がこのまま臨時国会を開かず、休業補償の予算措置を講じなければ、公務員の不作為に該当するから国や自治体に損害賠償請求ができる。弁護士有志がボランティアで飲食店や芸能人の損害賠償請求訴訟の代理人になろうと呼びかけ、日弁連が呼応すれば、政権は恐怖して国会を開かざるを得ないはずです」(小林氏)
憲政史家の倉山満氏が指摘するのは内閣法制局長への働きかけだ。2017年にも野党はモリカケ疑惑の真相解明のために憲法に基づいて臨時国会召集を要求したが、安倍内閣は98日間国会を開かなかった。この98日間の空白が憲法違反かが問われた裁判で、今年6月、那覇地裁は次の内容の判決を出した。
「内閣は、臨時国会の召集決定について憲法上の義務を負う。召集しないという判断はできず、召集期間に関する裁量も大きくない」