「改革の時代」の終わり

 だが、この「ストロングマン安倍晋三」の誕生は偶然ではなかったのではないか。実は2012年から翌年にかけて、東アジアでは中国の習近平国家主席(中国共産党中央委員会総書記)、安倍晋三首相、韓国の朴槿惠前大統領という3人の新リーダーが相次いで誕生した。いずれも父親が著名政治家であり、「保守本流」という点も共通している。

 この背景には、2000年代に入ってからの中国の急速過ぎる台頭や、リーマン・ショックという世界的金融危機などが関係していたように思う。東アジア三国は、いずれも目まぐるしく変わる世界情勢の激変に対応できる “ストロングマン”を必要としたため、同時期に似たようなキャラクターの新リーダーを生み出した…と考えるのは、ややドラマチック過ぎるだろうか。

 しかし、2012年から始まった「改革」の時代も、今終わりを告げようとしている。朴槿惠前大統領は収賄や職権乱用などで悲劇的な末路を辿ったし、安倍首相もコロナというアクシデントに飲み込まれ、経済再生、憲法改正という夢を実現できぬままでの退陣となった。

 残る1人、習近平国家主席はどうか。中国の総書記は近年、2期10年で交代するという流れがあったが、一強体制の習氏は2027年までの長期政権が有力視されている。だが、その“最強総書記”の足元も米中対立、コロナショックでぐらついているのが現状だ。同時期に誕生した3人のストロングマンたちだが、1人目、2人目といずれも予想外の形での退場となった。果たして残る1人はどのような結末を迎えるのだろうか。

【高口康太】
ジャーナリスト、千葉大学客員准教授、週刊ダイヤモンド特任アナリスト。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。中国の政治、社会、文化など幅広い分野で取材を行う。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書、共編著に『現代中国経営者列伝』(星海社新書)『幸福な監視国家・中国』(NHK新書)『プロトタイプシティ』(KADOKAWA)など。

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