自民党では大勢力を抱える二階氏(写真/AFP=時事)
だが、その二階が逆に官邸にねじ込んだ。挙げ句、政策撤回を岸田のせいにしてしまったのである。なぜそんな事態になったのか。別の官邸関係者が解説してくれた。
「もともと岸田さんはこの秋の人事で幹事長になるつもりで、次の総理総裁を目指してきた。一方、二階さんは幹事長ポストを死守したい。で、この際、公明側の立場に立ち、岸田を追い落とそうとしたのでしょう」
二階は狡猾な立ち回りをする。その一つが石破への接近だ。もともと田中角栄門下の二人は仲が悪いわけではない。そこで二階は官邸が毛嫌いしている石破派のパーティに講師として参加したり、石破を自民党鳥獣議連の会合にゲストとして招いたりし始め、「期待の星」と持ち上げる。つまりこれは「俺を幹事長ポストから外せば、次の総裁選で石破を担ぐぞ」という官邸に対するブラフにほかならない。
そしてこの時期に二階とタッグを組んだのが、菅なのである。昨年5月1日の改元以来、「令和おじさん」として国民の知名度をあげた菅は、ポスト安倍の有力候補に名乗り出た。その頃、ある自民党の代議士秘書はこう言っていた。
「実は令和の元号は安倍総理ご自身が最初に記者発表したいと言っていたのですが、菅さんが『それは前例がありませんから、私がやります』と押し切った。前例と言っても小渕恵三さんのときの平成しかないのですが、官房長官にはすでにポスト安倍が念頭にあったのでしょう。首相もそのあとに会見したけど、ほとんど記憶にないほど影が薄くなってしまった」
「石破と組むぞ」というブラフ
もともと官邸内では、首相側近グループと菅官房長官とのあいだで確執があったが、一挙に表面化したのがこの頃だ。さらに菅は昨夏の組閣で河井克行や菅原一秀の入閣を安倍に認めさせた。
とうぜん総理の分身と異名をとる首相補佐官の今井たちは面白くない。わけても今井たちが菅への警戒心を強めた出来事が、小泉進次郎の結婚報告だろう。菅は小泉と滝川クリステルを官邸に呼び、その場で記者会見まで開かせた。そこで菅が「ついでに総理に報告して来たらどうか」と小泉に指示したことまで明るみに出る。これでは今井たち首相側近が怒り狂うのは無理もない。
そこから双方の溝が深まり、河井や菅原の選挙違反事件が次々と明るみに出たのは、周知の通りである。そのなかで菅の懐刀として政権における多くの政策を担ってきた首相補佐官の和泉洋人の不倫騒動まで発覚する。