屋久島からプロ入りの可能性を確かめるために駆け付けた黒飛君

 屋久島高校の監督や顧問の先生も黒飛の背中を押してくれた。参加の条件となるプロ志望届を提出すると、学校の先輩・後輩からたくさんの連絡が入った。

「小さな島なので、すぐに噂が広まるんです(笑)。島民の皆さんからも『頑張って!』と励ましていただきました。8月24日は、学校から屋久島空港に向かったのですが、3階の教室から校門を出るまで、周りの生徒から次々と声をかけてもらい、車に乗ると後輩が走って追いかけてくれた。嬉しかったですね」

 練習会に参加したからといって、野球人生が拓けていく保障は何もない。だが、離島の無名球児の挑戦を、島民は尊重し、純粋に応援したのだ。

高校通算本塁打は「4本」

 2日間の練習会は、初日にシートノック、フリー打撃を行い、2日目はシートノックのあと、最大のアピールの場となるシート打撃(カウント1‐1からスタート)が行われた。1組目の捕手を任された黒飛は、ぶっつけ本番で3投手のボールを受けた。走者が盗塁を試みた場面では、二塁送球がそれてセーフになったものの、自慢の強肩(遠投102メートル)を披露。一方で、3打席に立った打撃では、投手ゴロ、四球、そして空振り三振とヒットはなく、アピールできなかった。

「自分の持ち味は出せたと思います。打つほうは結果を残せなかったけど、悔いが残る打席はなかった。通算本塁打は4本。離島ですから、練習試合も月に1、2回しかできないんです。遠征にはどうしてもお金がかかるので、夏と冬にアルバイト期間が設けられていて、野球部全員がアルバイトをして、遠征費を稼ぐ。僕はガソリンスタンドで働きました」

 西日本会場(甲子園球場)に参加した77人のうち、本州以外から参加したのは黒飛ただひとり。東日本会場(東京ドーム)でも北海道からの参加はひとりもいなかった。自費参加であることに加え、やはり新型コロナウイルスが沈静化していないことも背景にあるだろう。

 黒飛は、感染拡大が収まらない関西に1週間滞在したとあって、帰島後は学校から3日間の自宅待機を命じられているという。

「もし関西でコロナにかかってしまったら、(狭い地域に)噂が広まってしまうという怖さは正直、ありました。でも、コロナにかかったとしても、自分の夢を叶えるためにここに来たので気にしないです」

 搭乗時間が迫っていた。もしNPBの球団から声がかからなければ、大学入学共通テストで受験できる大学で野球を続け、4年後のプロ入りを目指すという黒飛は、ふたりの姉に見送られて、手荷物検査場に向かっていった。

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