本来なら6人の投手のボールを受ける予定だったが、佐藤は3人目の投手が降板した時に交代を告げられ、残りは明治大学の学生が受けることになった。いわば、練習会で佐藤は“戦力外通告”を受けた格好だ。打つほうでは6打席に立ち、三塁手の送球エラーに終わった第1打席以外はすべて三振。佐藤にとってほろ苦い経験となった。
「そうですね、悔しかった。でも野球は大学や社会人で続けていきたいし、NPBの選手になるという夢は持ち続けたいです」
佐藤にはもうひとつの夢があることも打ち明けてくれた。
「NPBの選手というのが一番ですが、自衛隊のパイロットになりたい気持ちもある。2011年の東日本大震災や、(2018年の)西日本豪雨の救助活動を見たりして、自衛官になりたいと思いました。パイロットとして隊員を運んで、救助活動や復興活動を支援する。野球の捕手というポジションは縁の下の力持ち。自衛隊も日本を陰から支えている。そういう点では共通点があるのかなと思います。これから自衛官になる試験も控えていて、もし受かったら……卒業までに決断したいです」
たとえ野球の技術は大きく見劣りしても、純粋に真剣にNPBの舞台を目指した球児の声に耳を傾ければ、彼らの参加を“記念受験”と揶揄することなどとてもできない。彼らは本気でドラフト指名を受ける希望に懸け、自分の力で野球人生の未来を切り拓こうとしたのだ。