ライフ

敷地内の放置自転車 無断で管理人が撤去処分するのは問題?

無断駐車している自転車を見かけても、勝手に処分してはいけない

 東京都に住むアパート経営の女性Aさん(58才)は、敷地内に放置された自転車の扱いに困っている。自身で撤去処分しようかと考えているが法的な問題はあるのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が相談に聞いた。

【相談】

 小さなアパートを営んでいます。アパートは駅に近いこともあり、敷地内に住人以外で自転車を無断で止める人がいて困っています。「無断で自転車を止めた場合、撤去します」と貼り紙をしていますが改善されません。住人が自転車を止めるのに邪魔になるので、放置された自転車は勝手に処分しても問題ないでしょうか。

【回答】

 敷地内の無断駐輪には特に取り締まる法律がないため、民法の原則で考えることになります。

 他人の土地に権利や正当な理由なく物を置くのは土地の所有権の侵害であり、不法行為です。不法行為に対する救済は損害賠償が原則ですが、所有権の侵害に対しては妨害排除として撤去要求ができます。これらの権利は、裁判所を通じて実現するのが法の原則です。自力で自転車を放り出すと自力救済として不法行為になるので注意が必要です。

 自転車の持ち主が撤去を承諾した場合には不法行為になりませんが、「撤去します」という貼り紙を承知の上で置く場合は、実際には撤去されないと思って置いていると解され、撤去を承諾したとはいえません。

 侵害された権利を守るためにやむを得ずした行為で、他人の権利を侵害しても正当防衛で不法行為になりません。しかし「やむを得ずする」とは、急迫でほかに手段がない場合をいうので、撤去が無断駐輪自転車による所有権侵害に対する正当防衛になるのは難しいと思います。結局のところ、勝手に処分はできません。

 例えば、すぐそばの空き地に移動して自転車がそこに置かれたままであれば、事実上持ち主に損害が発生しないかもしれませんが、道路上に出して事故が起きると賠償請求される可能性があります。

 路上放置自動車に関する条例に基づき役所が保管場所へ移動した場合、持ち主は保管場所まで取りに行き、移動費用の負担を求められますが、持ち主からあなたに苦情がくるかもしれません。もともと適切な場所に駐輪しなかったことが原因の損失であり、あなたに賠償義務があるといえるかは疑問ですが、面倒なことになるのは間違いありません。

 もっとも、長期間置きっぱなしでまったく利用された形跡もない放置自転車の場合、持ち主の置き忘れや、特に自転車が錆びついた古いものであれば放棄の可能性もあります。

 前者なら遺失物法で他人が遺失した物を拾得した者は速やかに警察署に差し出す義務があると定められています。

 後者の場合は、持ち主がいないのですからゴミとして処分することもできます。とはいえ放棄されたかどうかの見極めは簡単ではありません。遺失物の可能性があるという前提で、警察署に運んで遺失物として提出し相談するのがよいでしょう。

 こうした特別な場合以外は、無断駐輪の持ち主にやめるよう要求するしかありません。三角コーンやトラロープを張って、事実上無断駐輪できないようにした方が早いように思います。

【プロフィール】
弁護士 竹下正/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型

※女性セブン2020年9月24日

関連記事

トピックス

ビエンチャン中高一貫校を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月19日、撮影/横田紋子)
《生徒たちと笑顔で交流》愛子さま、エレガントなセパレート風のワンピでラオスの学校を訪問 レース生地と爽やかなライトブルーで親しみやすい印象に
NEWSポストセブン
鳥取の美少女として注目され、高校時代にグラビアデビューを果たした白濱美兎
【名づけ親は地元新聞社】「全鳥取県民の妹」と呼ばれるグラドル白濱美兎 あふれ出る地元愛と東京で気づいた「県民性の違い」
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
『ルポ失踪 逃げた人間はどのような人生を送っているのか?』(星海社新書)を9月に上梓したルポライターの松本祐貴氏
『ルポ失踪』著者が明かす「失踪」に魅力を感じた理由 取材を通じて「人生をやり直そうとするエネルギーのすごさに驚かされた」と語る 辛い時は「逃げることも選択肢」と説く
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《巨人の魅力はなんですか?》争奪戦の前田健太にファンが直球質問、ザワつくイベント会場で明かしていた本音「給料面とか、食堂の食べ物がいいとか…」
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン