芸能

樹木希林さん がん治療さえも楽しんだ「自分らしい生き方」

10年間樹木希林さんに寄り添った主治医が語った(写真/AFLO)

「がんっていうのはある意味素晴らしいもので、死ぬことに向き合わされるんです。大事な大事な命をいただいたということをしみじみと感じ、自分のことを自分でよく見極める、考え直すチャンスにしていただければ……」

 9月15日、樹木希林さん(享年75)の三回忌を迎えた。生前、がんと共に生きながら、数多くの珠玉の言葉を残してくれた樹木さん。7月18日に自ら命を絶った三浦春馬さん(享年30)も、彼女の著書で出合った言葉に感銘を受けたと話している。新型コロナウイルスで気持ちがふさぎ込んでいた都内在住の女性もまた、自粛期間中に読んだ樹木さんの本に鼓舞されたと話す。

「仕事も子育ても思うようにならず、落ち込んでばかり。でも、希林さんの本を読み返しているうちに、“焦ってもしょうがない”“この状況も楽しんでみよう”と思えるようになりました」(40代・会社員)

 冒頭の言葉は樹木さんが、がん治療を受けていた「UMSオンコロジークリニック」(以下、UMS)の10周年記念パーティー(2016年11月)に出席した際のスピーチの一部だ。同クリニック院長で『世界初 からだに優しい高精度がん治療』(方丈社)の著書がある、植松稔さんが語る。

「希林さんが病気と自分自身にずっと向き合ってきたからこそ生まれてきた言葉だと思います。パーティーには患者さんと、そのご家族ら300人ほどが集まっていましたが、希林さんのスピーチを誰もが真剣に聞き入っていました」

 約10年間にわたって樹木さんの治療を担当した植松さんが、三回忌を機に樹木さんのがん闘病について告白した。

カレンダー裏の「内田啓子 65才 老女」

 2005年に乳がんが見つかり、乳がんとリンパ節の摘出手術を受けた樹木さんが、鹿児島県鹿児島市にあるUMSを訪れたのは、2008年5月。超音波検査でリンパ節に転移したがんが増大していることが判明した翌月のことだった。そのとき、植松さんの元に届いたのは、「内田啓子 65才 老女」と書かれた診察依頼の手紙だったという。

「便箋ではなく、きれいに切られたカレンダーの裏に書かれていたんです。変わったかたなんだろうな……と思ってドキドキしていました。そして『はい、こんにちは』と言って、病院にいらっしゃったときに初めて、女優の樹木希林さんだったのか、とわかりました」(植松さん)

 植松さんは病巣に放射線を立体的に当てる「三次元照射」の第一人者。呼吸によって位置が移動してしまう病巣にも対応できる「呼吸追跡照射装置」を開発した。2006年に鹿児島にUMSを設立し、放射線のピンポイント照射によるがん治療を続けている。

「希林さんは、私の本を読んで放射線治療に興味を持ったようです。彼女の知り合いの医師に『紹介状を書きますよ』と言われたそうですが、『それは困る、やめてくれ』とおっしゃったそうです」(植松さん)

 女優・樹木希林として特別扱いされたくない。「内田啓子」(樹木さんの本名)という「まっさらな自分」で病気と向き合いたい──そんな気持ちだったのだろう。実は娘の内田也哉子さん(44才)は、樹木さんががん宣告を受けたとき、こう明かされたという。

「もう10年前からあったのよね、しこりが……」

 なぜそんな大事なことを言わなかったのかと也哉子さんが聞くと、樹木さんはこともなげにこう答えたという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン