このルックスで、完売画家と聞くと、順風満帆な人生を歩んできたように思うが、武蔵野美術大学で絵を学んでいた3年生のときに、父が病に倒れ、急逝。生活費も稼がなければならなくなる。
「キャバクラでバーテンダーをして生活費を稼いでいました。“六本木夜間部”って名付けてね。いい人も悪い人もいて、濃い人間関係があり、人間観察もでき、楽しかった思い出があります。大学在学中にプロデビューをしたのも、お金を稼がなければいけないという現実があったから。父が亡くなったことで、腹をくくれたというところもあります」
デビューのきっかけは、数多あるコンクールの1つで入賞した作品を、銀座の場末のギャラリストが見つけてくれたこと。
「最初は、小さいグループ展に参加させていただいたんです。そこのギャラリーはもうありませんが、そこから1つずつステップを上がってきた感じです」
思わず、お母様は反対しなかったのですかと尋ねると、
「母からは安定した仕事に就いてくれと、言われましたよ。就職しろって、2年前くらいまで言ってたし(笑い)。確かに親の言うことに正しい部分はあるかもしれないと思います。ただ、一見安定している生き方は、一瞬で失われたりする。特にこのようなコロナ禍では、いつ会社が潰れるかわからない。急に給料が止まったら、どうなるのか。フリーランスは、肌感覚で世界の経済の流れがわかる。その肌感覚を常に持っていることが、長期的に見れば安定するんじゃないかと思っているんです」
何を聞いても、すぐに答えが返ってくる。さすが、テレビのプロデューサーから声がかかるだけのコミュニケーション力の持ち主だ。
【プロフィール】
中島健太(なかじま・けんた)/1984年12月10日生まれ、東京都出身。武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒。大学3年でプロデビュー。20代で日展の特選を2度受賞。現在までの制作作品は500点を超え、そのすべてが完売しており、『完売画家』として注目を集める。「#画家として生きるために」というTwitterが反響を呼ぶ。現在はYouTubeでライブペインティングを配信するなど、精力的に活動している。朝の情報番組『グッとラック!』(TBS系)では、番組のポスターを手がけるとともに、木曜日コメンテーターも務めた。
■撮影/森浩司
※女性セブン2020年10月15日号