豪雨により車体が水に漬かり、人吉温泉駅に停車したままのくま川鉄道の車両。現在も代替バス運行が続いている(時事通信フォト)
読売旅行と日本旅行は鉄印帳のパッケージツアーを販売し、第三セクター鉄道等協議会が実施する鉄印帳の旅を支援している。読売旅行はWEBサイト「たびよみ」を管理・運営。WEBサイトには、すべての鉄印を集めた旅行者の名前を掲載する特典も付与している。
また、読売旅行の子会社である旅行読売出版社が「鉄印帳」を登録商標にしてブランドを管理。
読売旅行が中心になって鉄印帳のルール作成を進めたことで、全国各地に散らばっていた第三セクター40社がひとつにまとまることができた。
「第三セクター各社は路線の長さや、地域の観光資源の有無、駅員配置など、それぞれに事情が異なります。そのため、多くの社が参加できるように『手書きの鉄印のほかにも書き置きやプリントを認める』『受付場所は1か所以上』『対応する時間は、各社ができる範囲』といった具合に参加ハードルを下げ、”緩やかな連携”を模索したことで企画の実現に漕ぎつけることができました」(同)
徳島県の海部駅と高知県室戸岬の少し東にある甲浦駅まで8.5kmを結ぶ阿佐海岸鉄道は、工事中で駅までアクセスできず押印ができない。そうした事情が考慮されて、現在は39社の鉄印を集めた旅行者が対象になっている。
また、鉄印帳の企画スタート直前には、提案者でもあるくま川鉄道が豪雨によって運休するというアクシデントに見舞われた。くま川鉄道に配慮して企画の延期も検討されたが、くま川鉄道には鉄印のネット販売を認めるという特例が設けられた。
40社をまとめるだけでも大変な苦労があったことは想像に難くないが、こうした想定外のアクシデントが起こり、その都度、読売旅行は調整に追われた。なにより、鉄印の旅のルール作成をしている間も新型コロナ禍は収束することなく猛威を振るった。鉄印帳の実現は、苦難の連続だった。
「今回の鉄印帳は三セク各社にとっても初の試みで、どの程度の反響があるのかといった不安が現場にもありました。そのため、鉄印帳の初版は少なく、5000部でした。ところが、販売開始からわずか1か月弱で完売。そのため、8月中旬に1万部を増刷しています。さらに、10月中には追加で1万部を増刷する予定にしています」(同)