トランプ陣営のホームページは「ボクサー」アイコラで強い男アピール(時事)

 その通りであるなら、何万人という国民の命を奪った大失政である。本来なら、候補者同士の討論会であれタウンホール形式であれ、そうした本質的な問題に絞って徹底的に論じることが有権者にとって有意義なはずだ。47年間のニューヨーク生活で、4年に一度、大統領選挙を見てきた。今回の低レベルな討論を見て改めて気づくのは、大統領選挙では、もっと絞ったテーマで深い議論が必要だということだ。毎回、妊娠中絶や銃規制、最高裁判事の人選など、本質的ではあるが、いくら論じても結論や解決策が出てくるわけではないテーマばかりに多くの時間が割かれるのは国にとって良いことではない。共和党と民主党が争う限り、どの討論も似たり寄ったりの内容で、歩み寄ることはないのである。

 さて、トランプ、バイデン両氏の直接対決はあと22日の1回だけだが、コロナ問題と並んで論じなければならないのが経済だ。アメリカ経済、特に庶民の生活はいよいよ限界に近づいている。ちょうど筆者が世話になってきた仕立て業者のボブから電話があり、「ついに来るべきときが来た。店を畳むことにした。仕立ての仕事は家で続けるから、必要があったら連絡してほしい」と言う。ボブの妻はがんを患い、治療を続けている。もちろん多くのカネがかかる。ボブの収入が減れば、妻の命も削られる。ヘアサロンを経営するジェニーも苦しい生活を嘆いていた。せっかく人気を得て繁盛し、営業を3店に広げていたが、それが仇になった。最近、無理して3店を再開したが、感染を恐れることと、客自体の懐が寂しくなったことで、閑古鳥が鳴いている。

 庶民の経済が苦しくなれば、社会の治安も悪化する。なかには、ミシガン州知事を暗殺しようとしたグループのように、暴力や革命によって社会を変えようとする集団も出てくるだろう。コロナ対策、経済対策を正しく行うこと自体が法と秩序を守ることになる。政府が提案した1兆8000億ドル(約200兆円)の経済対策は、いつ国民の手に届くのか。共和党と民主党がワシントンの戦いを続ければ続けるほど、国民の間にはワシントン不要論が広がっていくことになる。

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン