国際情報

トランプ「40万人死んでも大したことない」の言いたい放題

何を言われても平気(AFP=時事)

 アメリカ大統領選挙は、いよいよあと3日間の戦いになった。トランプ大統領の猛追が続いている。しかし、相変わらず暴言、失言も多いのである。それなのに、バイデン氏から効果的な反撃はない。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏は、民主党の弱体化がこの大接戦を招いたと分析する。

 * * *
 アメリカのコロナウイルス感染者は900万人を超え、死者の数は23万に達しようとしている。来年2月までに、死者の数は40万人に達するという推計も出ている。効果的で安全なワクチンの完成もめどが立っていない。

 40万人というのは恐るべき数である。日本の読者には思い出してもらいたいが、未曽有の大災害となった東日本大震災の死者は2万人である。その20倍もの人が、人類の力では防げない自然の脅威によって無念の死を遂げようとしているのだから、国家が全精力を傾けて戦うべき事案であることは論をまたない。

 ところが、である。そんな恐ろしい予測が出たことに対し、トランプ大統領の息子で少々軽薄なことで知られるドナルド・トランプJr.氏は、「そんな数字がどうしたというのか。そんなもの何でもない」と発言したのである。当然、その言葉は人々を怒らせているが、父親のトランプ大統領も平気な顔で、「It is what it is.(見たままだ)」の一言で片付けた。まるで自分には関係ない話だというそぶりである。本当に国のトップとしての自覚があるのか疑問を拭えない。

 ここまで有権者を怒らせ、呆れさせる発言をしているのに、対立候補のバイデン氏も民主党も効果的な反論、攻撃ができていない。トランプ親子に発言の訂正を求め、大統領としての資質に著しく欠けていると非難してもよさそうなものだが、驚くほど静かにしている。トランプ氏の暴言に慣れてしまったのだろうか。政治家たちが沈黙しているから、CNNとMSNBCのニュースが猛然と怒り、代理戦争を仕掛けているが、それに任せているだけではバイデン氏の票には結びつかないのではないか。バイデン氏もまた、コロナ問題を自分のことと捉えておらず、大統領としての資質がないのだという印象が強まるだけである。

 トランプ氏は、コロナ対策などとっくに放棄している。それより経済活動を再開するほうが良いとうそぶき、自分はビジネスで大成功した人間だから、経済の専門家であるといったレトリックで国民を煙に巻こうとする。コロナ対策をせず、店や工場を再開するほうが国民を救うことになるというのである。コロナ対策がことごとく失敗したことを覆い隠すための方便であることは明白だが、それに対するバイデン氏の反撃がないのだから、一定数の有権者は「そうかもしれない」と思うだろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
立花孝志容疑者(左)と斎藤元彦・兵庫県知事(写真/共同通信社)
【N党党首・立花孝志容疑者が逮捕】斎藤元彦・兵庫県知事“2馬力選挙”の責任の行方は? PR会社は嫌疑不十分で不起訴 「県議会が追及に動くのは難しい」の見方も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の打ち上げに参加したベッキー
《ザックリ背面ジッパーつきドレス着用》ベッキー、大河ドラマの打ち上げに際立つ服装で参加して関係者と話し込む「充実した日々」
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン