【3】髪や頭皮が傷む可能性があるから
3つめはシンプルに、髪や頭皮の傷みなどトラブルにつながりやすいからだという。薬剤そのものというより、テクニックの問題が大きいという。
「自分で染めると放置時間を守れなかったり、ムラになってしまったり、すすぎが十分でなかったり、さらに頭皮の保護が甘かったり……。ホームカラー剤は時間を正しく守って使用し、完全に洗い流すことを前提に作られた酸化染毛剤(医薬部外品)です。流し残した薬剤が刺激になって、接触皮膚炎になるリスクもありますし、髪や頭皮のダメージにもつながります」
美容院のプロ用カラーに使われているアルカリ剤は、蒸発しやすく髪に残りにくいアンモニアが使われていることが多い。しかし、ホームカラー剤はこのにおいが敬遠されるため、においの少ないアルカリ剤が使われているのだ。
「においが少ない分、髪や頭皮に残りやすいという欠点があります。しっかり流しても、アルカリ剤が残ってしまえば、それが頭皮や髪を乾燥させる原因になってしまいます。ヘアカラーを得意とする美容院では、プロ用の幅広い種類の薬剤を使いこなし、色の出方や染まり具合を経験と技術でカバーすることができます」
「自宅では染めないで」といわれると、私たちお客側としては「その方が儲かるからでしょ?」と邪推したくなるが、美容師たちにはそう言う理由があるということだ。
【プロフィール】伊熊奈美(いくま・なみ)/美容ジャーナリスト。日本毛髪科学協会毛髪診断士・認定講師、国際毛髪皮膚科学研究所毛髪技能士。1972年静岡県浜松市生まれ。地元タウン誌の編集記者、女性誌編集部の美容担当などを経て、フリーランスに。近著に『いい白髪ケア、やばい白髪ケア』がある。