伝統に裏付けられた「育成入団NG」のプライド
加えて特筆すべきは早稲田特有のトレーニングだ。今年のドラフトで4球団競合の末、楽天からドラフト1位指名を受けた早稲田のエース・早川隆久が語る。
「早稲田は他大学と比べても特に練習量が多いと思います。走る量が格段に多く、冬は両翼のポール間走50本以上が当たり前だし、3月の沖縄でのキャンプでも400メートル走20本を楽々こなさなければなりません。こうした地道なトレーニングは十分な基礎体力をつけるため。これもすべて飛田(穂洲)先生の教えである“一球”にこだわる野球をするためです。一球にこだわるためには、どんな球にも諦めず食らいつかねばならない。途中でバテるなんてもってのほかですから」
トップレベルの選手が集まり、高い目標意識を持ちながら、「六大学一」のトレーニングで鍛え上げる。結果、卒業生がプロへ行く確率は高くなり、厳しいプロの世界でも戦い抜くことができるというわけだ。これまで100人以上プロ野球選手を輩出してきたが、慶應に比べて球史に名を残す活躍をした選手が多いのもこれが理由かもしれない。
もう一つ、興味深い話がある。実は早稲田にはプロ入りに関する“暗黙のルール”がある。「主将は下位指名NG」「育成契約はNG」というものだ。2017年にソフトバンクから育成4位で指名された大竹耕太郎は、早大から育成でプロに入団したわずか2例目。「育成で指名された時、大学側から猛反対されました」と語る。
「『育成では行かない』というのが早稲田では当たり前だったようなんです。でも、自分の人生は自分で決めたかったので、なんとか頼み込んで、自分の意思を貫き通しました」
大竹は入団した年にウエスタンリーグで8連勝し、8月に支配下登録。史上初の育成出身の初登板初勝利を挙げた。今後、早稲田からの育成指名を緩和する功労者になるかもしれない。
■撮影/山崎力夫
※週刊ポスト2020年11月30日号