“手首測定”は要注意
まずは測定結果(別掲表)をご覧いただきたい。同じ人物でも、検査をする機器によって測定結果に少しずつばらつきがある。
それに対して、同一機種であれば、各人5回の測定結果に大きな差は出なかった。ただし、ハンディタイプの一部には、時折35℃前半など極端に低い結果が出る場合があった。また同一機種で額と手首を測定した場合、手首のほうが低く出る傾向があり、その差は最大1.4℃だった。
以上のような結果を踏まえ、早稲田大学人間科学学術院体温・体液研究室の永島計教授に話を聞いた。
「熱を持つすべての物質はその表面から赤外線を放出しています。非接触型の体温計はこの赤外線の量を測り、それを温度に換算して体温を推定しています。
メーカーによって体温の算出方法に若干の違いがあるため、機器ごとの測定結果にばらつきが出るのは不思議ではない。また同じ機器でも測る距離や角度が少し違うだけで測定の結果に大きな変化が生じます」
同じ機器で額と手首を測定した場合、結果が異なるのはなぜなのか。
「人の体表の温度は、場所によって大きな違いがある。一般的に、身体の中心から遠い部分ほど、その表面温度は低くなり、推定される体温は低くなる傾向がある。多くのメーカーが額での測定を推奨しているのに手首で測定すれば、大きな誤差が生じます」(同前)