国内

軍事研究をしないと宣言してきた学術会議のどこが危険なのか

問題発覚後に行われた学術会議の幹事会(時事通信フォト)

問題発覚後に行われた学術会議の幹事会(時事通信フォト)

 日本学術会議をめぐる騒動は、いまもまだ続いている。はたして政府は学術会議の何を問題にしているのか。そしてそれは妥当なのか。評論家の呉智英氏が考察する。

 * * *
 日本学術会議の会員候補が菅義偉首相によって任命拒否された問題がマスコミをにぎわしている。いくつもの学術団体がこれに抗議声明を発表しているが、世論の反応はむしろ鈍く、同会議が日本学術会議法に基づく一種の国営団体である以上何らかの人事介入はありうる、という声が強い。

 本来、学術会議は完全非政府団体にすべきなのだ。そうすれば政府による干渉はありえない。これは日本共産党が政党助成金制度に反対し、苦しい党財政の中でも助成金受け取り拒否を貫いているのと同じだ。助成金制度は官制政党化への第一歩だとするのは、正しい指摘である。

 私は三年前にも本欄で学術会議への批判の一文を草しておいた(小学館新書『日本衆愚社会』所収)。それは同会議が軍事目的での科学研究を行なわないという方針を再確認したからである。軍事研究は、戦争をするためにも、戦争を防止するためにも必要ではないか。戦争には侵略戦争もあればレジスタンス戦争もある。革命戦争もあるしそれを鎮圧する戦争もある。いずれの戦争のためにも、またいずれの戦争を回避するためにも、軍事学は無視できない。

 政府の学術会議への干渉意図は、旧民主主義科学者協会系の研究者、要するに共産党系の研究者が多いので、これを排除しようというものらしい。愚かな考えである。一九四九年の設立以来何度も軍事研究をしないと宣言してきた人たちのどこが危険なのか。

 公安調査庁は、共産党は今なお暴力革命の可能性を否定していない、と公報しているが、とても信じられない。共産党が暴力革命の可能性を否定しないのは、これを否定すれば共産主義者を名乗れなくなるからである。共産党は一世紀前から非暴力革命の共産主義者を痛罵し、それを正統性の証しとしてきた。だから共産党は暴力革命放棄を宣言できないのだ。公安調査庁は、暴力革命を放棄しない共産党の危険性を強調することで自分たちの存在意義を確立できる。双方の思惑が一致している。私はこれは出来レースだと思う。

関連記事

トピックス

鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《坂口健太郎との熱愛過去》25歳の永野芽郁が男性の共演者を“お兄ちゃん”と呼んできたリアルな事情
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン