私たちの日常が、いかに脆く繊細な前提で成立しているのか?

 コアなファンのなかには、こんな人もいる。毎年の単独ライブにくわえて、森田哲矢のトークライブにも足を運ぶというファンのBさん(30代)は、私立大学で社会学講義を受け持つ研究者だ。

「面白いコント師の方は他にもたくさんいますが、『さらば』の設定には学ぶところがとても多いです。大学の講義でライブDVD映像を学生に見せたこともあります。社会学には、エスノメソドロジーという分野があります。これは簡単に言うと、人々の会話の分析を通じて、日常世界における社会秩序がどのようなメカニズムで維持されているのかを問うもの。その分野の有名な実験に『違背実験』(breaching experiment)というものがある。

 調査者が被験者との会話のなかで、少し“トンチンカン”な質問や、返答を繰り返していきます。すると相手は違和感を覚えはじめ、徐々に会話が成立しなくなってくる。その流れのなかで、私たちの日常の共通前提や知識の文脈をあぶり出すという実験です。さらばさんのコントは、この『違背実験』的要素がとても強いと感じます。

 ネタが進んでいくなかで、『私たちの日常が、いかに脆く繊細な前提で成立しているのか?』『それが崩されたとき、どのような驚きがあるのか?』を教えてくれる。そういった『あり得たかもしれない、現実と紙一重のパラレルワールド』を見せてくれる知的な興奮に満ちているのが魅力です。

 ネタ作りをしている森田さんには、いったいこの社会がどのように見えているのか。その鋭い知性には脱帽するばかりです。シモネタも多いのに、単独ライブ後は毎回、高級な舞台を鑑賞したような気分になります」(Bさん)

 主にネタを作成している森田哲矢は、自ら「ゴシップ好き」を名乗りトークライブで芸能ゴシップを披露したり、“ゲスコラム”でその文才を発揮するなどさまざまな顔を見せる。一方、東ブクロはSNSのDMで知り合ったファンを「お持ち帰り」し、その女性にネットで一部始終を暴露されるも、ひょうひょうとした態度を貫く強心臓でチャーミングな一面も人気だ。

 2021年には今年コロナ禍で延期となった単独ライブの開催が決定している。“非よしもと芸人”ながらお笑いファンの間で高い評価を得る彼らの活躍から、今後も目が離せない。

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