あるいは、1968年に世界第2位の経済大国となった日本は、1973年に1ドル=360円の固定相場制から変動相場制に移行。その後、ベストセラーになったエズラ・ヴォーゲル教授の著書『ジャパン・アズ・ナンバーワン(ナンバーワンとしての日本)』を「ジャパン・イズ・ナンバーワン(日本がナンバーワン)」と読み替えて弛み、1985年のG5(先進5か国蔵相・中央銀行総裁会議)で当時の竹下登蔵相と澄田智日銀総裁がプラザ合意(*)を受け入れて急速に円高が進行した。
【*1985年9月22日にニューヨークのプラザホテルで開かれたG5によるドル高是正に向けた合意。具体的な内容は、G5各国が「基軸通貨であるドルに対して参加各国の通貨を一律10~12%幅で切り上げ、そのための方法として参加各国は外国為替市場で協調介入を行なう」というもの】
結果、日本の輸出産業は非常に弱くなり、同時にお金が日本に滞留。低金利政策も相まって投機が加速し、不動産や株、絵画、ゴルフ場の会員権など、ありとあらゆるものが高騰してバブル経済が膨らみ、それが1991年に崩壊して日本は「失われた30年」の衰退・低迷に向かったのである。
「人材」格差が「国力」格差に
中国は優秀な人材が経済を下支えしている。たとえば、20年前の中国に英語を流暢に話せる一般市民はほとんどいなかったが、その後、英語教育に力を入れてきたので、今では英語に堪能な人がそこら中にいる。
米誌『TIME』が発表した2020年版「世界で最も影響力のある100人」は中国系が最も多い。日本人は大坂なおみさんと伊藤詩織さんの2人だけである。アメリカへの留学生、科学論文や特許などの数も、今や中国が世界一だ。「量」だけでなく「質」も、この5年くらいの間に格段に進歩している。
言うまでもなく、人材格差は国力の格差になる。中国は、近代国家の“武器”は「人」だということで、21世紀の情報化社会で国際的に活躍できる人材の育成に最大限の力を注いでいるのだ。20世紀の工業化社会時代の旧態依然とした教育をちまちまとマイナーチェンジしているだけの日本との差は広がる一方だ。
ことほどさように、中国は経済規模でアメリカを追い越して2035年までに世界ナンバーワンの「最強国家」になる準備を多方面で計画的に着々と進めているのである。
アメリカ大統領選挙は民主党のジョー・バイデン前副大統領が勝利したものの、前号でも述べたように、ドナルド・トランプ大統領が執拗に「中国叩き」を続けてきたせいで、アメリカ人の70%超が中国に対して警戒心を持つようになった状況は当分変わらないだろう。