「あざとさ」が求められる背景
「女性の『あざとい』言動を女性が批判的に指摘する場面は、バラエティ番組ではおなじみのものです。そこでベースになっている感情は怒り。女性同士の対立を強調するような演出もしばしばです。こういった番組は、『女性には二面性がある』『女性はヒステリック』といったステレオタイプの再生産に寄与している面もあります。そんな中、『あざとくて何が悪いの?』は田中みなみと弘中綾香アナらが再現VTRを見ながら『あざとさ』をひとつの技術として細かに解説しつつ、最終的にはポジティブなものとして受け止めています。その点に、これまでの番組にない新しさと魅力があるように思います」(飲用てれび氏)
しかし、なぜ「あざとさ」を分析する番組に人々が惹かれているのか? 飲用てれび氏は、“自己プロデュース”が重視される近年の風潮に着目する。
「現在は、芸能人のみならず普通の会社員にとっても、自己プロデュース能力が求められる場面が増えています。若い世代に限らずSNSで私生活を発信する人は多く、アプリでの自撮り写真の加工も当たり前です。そんな時代にあって、一定の『あざとさ』は多くの人に必要なものになっているのではないでしょうか。『あざとさ』を技術としてポジティブに語る番組が好意的に受け止められているのは、そんな時代背景もあるように思います」(同前)
もはや「あざとさ」は批判の対象ではなく、現代人が持つべきスキルになっている。そして、それは日本に限った状況ではないだろう。と考えると、『あざとくて何が悪いの?』の躍進はまだ続きそうだ。
●取材・文/原田イチボ(HEW)