相談員たちはマスクをつけ、密を避けながらコロナ禍でも電話を受け続ける(写真は岡山いのちの電話。共同通信社)

コロナ禍でも密を避けながら電話を受け続ける相談員(岡山いのちの電話、写真/共同通信社)

 相談員に申し訳ないという気持ちもつのった。

「『こんな話を聞かせて申し訳ない。早く切ってあげないと』と思って、すぐに電話を終えてしまうこともありました。そのくせ、電話口からほかの相談員の声が漏れ聞こえてくると、なんとなく事務的に感じて嫌になり、切ったこともある。相談員のかたを困らせてしまったかもしれません」

 救いを求め、わらにもすがるような気持ちで電話をしているからこそ、ちょっとした相手の態度や周囲の状況に繊細になり、過敏になってしまう。それゆえ電話がつながっても、苦しみをうまく伝えることができず、結果、死にたいという思いを払拭できない。そんな経験をした遠野は、自らが電話相談を受けつける「こころの電話」を2015年6月に開始した。

「電話をかけ続けた経験から、私と同じような悩みを持つ人が心の内を吐き出せる場所を作りたかったんです」

 事前にメールで相談内容を聞き、遠野から電話をする形だった。併せて悩みを受けつけるブログ配信も開始した。

「同じ助言を繰り返さないように手書きの“カルテ”を作ったのですが、その量が多くて手が痛くなりました。自分が悩みを相談したときに否定的な言葉が何よりつらかったため、相手の言うことは絶対に否定しないよう心がけました。

 例えば、リストカットをしたいという衝動に駆られている女の子に『切らないで』とは言いません。『後遺症が残るほど深く切ってしまうと、後で自分がつらくなってしまうよ』などと、相手が逃げ場をなくさないような回答を心がけました」

 しかし、いざ始めると相談員の大変さが身に染みた。

「何より、本当につらかった。基本的に、私は話さず相手の話に耳を傾けたのですが、私が感情移入しすぎて、しょっちゅう一緒に泣いてしまうんです。相談員は冷静でいるべきですが、私には充分な対応ができないのではないかという思いに至り、ブログの配信を含め、相談の活動を今年の6月に終えました」

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