冷蔵・冷凍で3週間生存する
輸入食品から新型コロナが検出されるケースが相次いでいるのは、日本以上にコロナに敏感で、感染封じ込めのためにおびただしい数のPCR検査を行っている中国だ。中国紙によると、11月13日から16日までの4日間で、湖北省や山東省など6省10か所で、アルゼンチンやブラジル、サウジアラビアなどから輸入された冷凍肉や冷凍えびからウイルスを検出。中国税関当局は関連企業からの輸入を一時停止したという。
シンガポール国立大学病院の感染症の専門医であるデール・フィッシャー氏は8月に発表した論文の中で、「冷凍(マイナス20℃)・冷蔵(4℃)されたサーモンや鶏肉、豚肉で、新型コロナウイルスが3週間もの期間、生存した」と報告した。
その上で、新型コロナが「明らかに断絶された地域で局所的に再発生している」理由について、「汚染された食品や食品包装の輸入が発生源となっている可能性がある」と指摘。汚染された輸入食品がそれに接触した人にウイルスをうつす可能性があり、国際的な食品市場では、クラスターが時折発生することが予想されると述べているのだ。豊洲市場のケースは、まさにこれではないのか。
市場で起きることならば、私たちの自宅のキッチンでも、起こり得ることではないのか──昭和大学客員教授(感染症)の二木芳人さんもこう指摘する。
「コロナウイルスは冷凍すると非常に長生きします。実際、われわれがウイルスを使った実験をするときには、生きたまま保存するために超低温の冷凍庫を使うほどです。なので、冷凍食品にウイルスがいることは充分にあり得る話です。人の咳やくしゃみからウイルスが付着し、そのまま冷凍されればウイルスは生きている。その冷凍食品が流通すれば、それを買った人や、封を解いて食品加工する人が感染するリスクがあります」
いま中国国内では、輸入食品から新型コロナが検出された話題で持ちきりだ。中国事情に詳しいジャーナリストの富坂聰さんが言う。
「中国はものすごい量のPCR検査を行っていて、国内では“1日の感染者ゼロ”という状況を何度も作り上げてきました。ところが、そういう中で1人とか2人、突然、感染者が現れる。その理由を徹底的に探っていくと、共通するのは市場にかかわっている人、特に冷凍食品や冷凍倉庫に関係している人に行き当たるので、輸入された冷凍食品がいちばん怪しいと躍起になっているのです」
中国では6月、北京で集団感染が発生した際、市内の卸売市場で輸入サーモンを加工したまな板からウイルスが検出された。サーモン自体ではなく、まな板がウイルスに汚染されていた可能性が高いと判断されたようだ。これを機に輸入食品の検査が強化され、その後、食品の表面や包装からウイルスの検出が続出することになった。
中国税関当局は、7月と8月にブラジルから輸入した鶏手羽肉や、エクアドル産冷凍えびの包装などから、ウイルスが見つかったと発表。10月にもロシアの漁船3隻とオランダにある倉庫から出荷された製品のパッケージから、11月にはインドネシアから輸入された冷凍魚類からも検出された。ほかにもドイツやカナダ、ニュージーランド、インドなど20か国の包装加工品からウイルスが検出されたと中国側は主張している。
「特に中国国内で多く報じられているのが、冷凍えび。南米や東南アジアからの輸入品です」(富坂さん)
海外から肉やえびなどの魚介類を輸入しているのは、中国だけだろうか。もちろん、そんなわけはない。そういった食材が日本に輸入されている可能性は充分にあるのだ。