(写真/GettyImages)

グラミー賞にノミネートされたBTS(写真/GettyImages)

また、10月はメンバーのジミンの誕生月だったため、中国のARMYがソウル中区役所と協力し、「明洞ジミンテーマ通り」と題した盛大な誕生祭を実施。ソウル中心地の明洞のあちこちにジミンの写真や看板が登場し、メインストリートの入口には「ジミン楽園へようこそ」と書かれた大型のLEDゲートも設置された。休業中のお店の大型看板がジミンの写真に代わっていたり、レストランやカフェの中を覗くとひょっこりジミンの等身大サイズの立て看板が見えたりして、ARMYではない私でも宝探しのようで楽しい気持ちになった。目玉は明洞芸術劇場前に設置された、スノードームにすっぽり入ったジミンのオブジェだ。夜になると灯りがともり幻想的な雰囲気になるので、明洞の観光スポットの一部としてずっと置いて欲しかったくらいだ。

 韓国では、こうしたARMYパワーに注目する記事が増えている。「歴史上最も強力な“ファンダム(熱心なファン集団)”」、「ARMYは全世代、全世界に存在する」とし、ARMYのような自主的に動くファンは他のアーティストには無い現象であり、その存在自体も単なる狂信的なファンのものとは性質が異なることなどを伝えた。

 ARMYたちの“規格外”の活動には、海外メディアも注目している。英ロイター通信や米ブルームバーグ、米ワシントンポストは、BTSが6月、人種差別の撤廃などを訴える「Black Lives Matter」運動に100万ドルを寄付したところ、ARMYもこれに呼応し同額の100万ドルを集めたことなどに触れ、SNS上の繋がりやハッシュタグを使い、社会問題に積極的に声を上げ行動するこれまでにない部類のファンであることを詳しく報じた。アジア人であるBTSも差別の対象になる可能性があるため、「人種差別問題には積極的に対応する」という米国ARMYたちの声も紹介していた。

 2020年に3周年を迎えたユニセフとBTSが行っている児童・青少年に対する暴力根絶運動「LOVE MYSELF(私自身をまず愛そう)」でも、SNSなどでのARMYの活動により寄付金額は2020年10月末に32億ウォン(約3億円)を突破した。

 アイドルとファンの先例の無い新たな関係性を築くARMYの活躍から目が離せない。

【趙章恩】
ジャーナリスト。KDDI総合研究所特別研究員。東京大学大学院学際情報学修士(社会情報学)、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。韓国・アジアのIT・メディア事情を日本と比較しながら分かりやすく解説している。趣味はドラマ視聴とロケ地めぐり。

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