実績と評価で同世代をごぼう抜き
太賀さんの人柄を掘り下げる意味で忘れてはいけないのは、昨年6月の改名。それまでの「太賀」から、本名の“中野”と“仲間’をかけ合わせた「仲野」を加え、「仲野太賀」に変わりました。
本人は改名の理由を「仲間との出会いが財産」「俳優として生きていく決意の表れ」と話していましたが、太賀さんは現場の人間関係を大切にする人柄で知られていますし、「俳優道を究めていきたい」という気持ちは本物でしょう。ただ、業界内では「顔と名前が認知され、実力も認められ、二世俳優と言われる不安がなくなったいいタイミング」と見られているのです。
『愛という名のもとに』(フジテレビ系)のチョロ役で一世を風靡した父・中野英雄さんの名前やコネに頼らなかったこと。憧れていた山田孝之さんの所属事務所に頼んで入れてもらったこと。その他にも、各作品の関係者に話を聞くほど、芯の強さを物語るエピソードが出てくるなど、ひょうひょうとしている印象を持たれがちですが、仕事に関しては俳優という仕事に賭ける熱血漢のようです。
太賀さんは2012年の『黒の女教師』(TBS系)で、同世代の山﨑賢人さん、土屋太鳳さん、広瀬アリスさん、杉咲花さん、中条あやみさん、岡山天音さん、松村北斗さんらと共演したものの、ほとんど目立ちませんでした。また、2015年の『恋仲』でも同世代の福士蒼汰さん、野村周平さん、本田翼さん、山本美月さん、新川優愛さん、大原櫻子さんらと共演しましたが、ここでも大きなインパクトは残せませんでした。
しかし、2020年が終わろうとしている今、太賀さんはここで挙げた売れっ子俳優たちの誰にも負けない実績と評価を得ています。太賀さんは「商業的な規模や報酬で作品を選ばず、誰とどんな仕事をするかで選ぶ」ことで知られていますが、来年はゴールデン・プライム帯での主演作が放送されてもおかしくないでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。