欧米でも神経再生を目的とした医療機器が開発されている。例えばコラーゲンを筒状にし、神経を覆うものだ。しかし、コラーゲンは2、3か月かけて分解されるせいで炎症を起こしやすい。その点、今回のシートは分解速度が遅いために炎症の心配がない。そのような経過を経て、今秋にナノファイバーシートによる神経再生の治験が始まった。
「対象となるのは中等度の手根管症候群患者と指の神経を切断した方の33人を予定しています。糖尿病や人工透析中の方、脳梗塞後や首の疾患で手が痺れている方などは除外となっています。治療は神経圧迫解除手術の際に、障害されている末梢神経にシートを巻きます。3か月経過したところで症状の改善程度を検査し、治験は1年間で終了となります」(田中特任教授)
治験は全国6つの医療施設で実施中だ。すでに日本臓器製薬はシートの商業生産が可能な体制を整えている。将来的には手足の様々な患部の末梢神経再生を目指す。
取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2020年12月11日号