さらにアドリブは続く。
「じゃ『カーメー』って飛んできたらカメ?」「カメだよね」「甲羅がついてるカメとどっちが先?」「カメだね、万年ってくらいだから」「カメは千年、カメも万年?」「(噴き出す)カメがいたらカメって付けないだろ。面白いなオマエ(笑)」
勝手に動き出した二人が止まらない。演者が登場人物のアドリブに本気で笑うという凄い光景。一之輔はそれを「滑稽の神が降りてきた」と言う。そう、確かにこの日の『つる』には滑稽の神が降りていた。
【プロフィール】
広瀬和生(ひろせ・かずお)/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。2020年1月に最新刊『21世紀落語史』(光文社新書)を出版するなど著書多数。
※週刊ポスト2020年12月18日号