ビヨンドコロナに向け価値観や生活が大転換
もっと「らしくない」生き方をしよう。ぼくはそう訴えたいのだが、実はコロナ禍のなかで、すでに軽やかに飛んでいる若者たちもいるようだ。
10月25日に放送された「NHKスペシャル パンデミック激動の世界」第4回では、新しい働き方をする若者たちの姿が紹介されていた。
東京都心のオフィスを離れ、地方に移住した社員が、インターネットをつないで働いていた。今は北海道の小樽にいて、翌月は福島、その後は瀬戸内、鹿児島、沖縄と、日本中を旅しながら働いている女性もいた。アメリカでは、トレーラーハウスや豪華クルーザーが売れているという。仕事場がどこでもよいなら、好き勝手に移動しながら働こうという発想らしい。
こうした動きを見るだけでも、コロナが既存の「らしさ」を打ち壊して、「らしくない」働き方を後押ししていることがわかる。職種やネット環境など条件さえ整えば、いとも簡単にその境界を乗り越えていく人たちがいるのである。
コロナとの闘いはこの冬、どうなっていくのかわからない。けれど、「らしい」「らしくない」といった区分けがなくなるくらいに、多様な生き方、多様な価値観が醸成されるのだとすれば、コロナに耐え忍ぶ価値はあるように思う。
【プロフィール】
鎌田實(かまた・みのる)/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。著書に、『人間の値打ち』『忖度バカ』など多数。
※週刊ポスト2020年12月18日号