福岡県在住の会社員・松尾壮一郎さん(仮名・20代)も、コロナのせいで友人を失ったとうなだれる。
「無二の親友が、今年の春挙げる予定だった結婚式を、コロナの影響で夏に延期していました。でも、夏になっても感染者数が多かったので秋へ延期に。そしてこの10月に、やっと式を上げる段取りが出来、あと二週間で親友は晴れ舞台に立つはずでした」(松尾さん)
前祝いも兼ねて、数度親友と飲んだという松尾さんだったが、会社の同僚がコロナ感染。調査の結果、松尾さんは濃厚接触者には該当しなかったものの、親友に事実を告げた。もし松尾さんが感染していれば、親友も、その新妻にも危険が及ぶ。とはいえ松尾さんに体調の変化はなく、念の為、親切心からの「申告」である。しかし友人の反応は意外なものだった。
「やっと式を挙げられるのにふざけるなと、すごい勢いでキレられました。気持ちはわかるし、どうしようもないこととはいえ、悪いことをしてしまったという気持ちもありました。ただ、あまりに一方的に責められて……」(松尾さん)
親友は、松尾さんのせいで式が挙げられなくなったら、式場のキャンセル料を支払えとまで言ってきたのである。
「友人はすでに2回の延期で、100万円近いキャンセル料を払っていたんです。だから気持ちはわかります。でも、俺だってわざとじゃない、祝う気持ちしかなかった。なのに……」(松尾さん)
結局この事がきっかけになり、20年来だったという二人の仲は裂かれてしまった。松尾さんの同僚に感染者が出たこと、その松尾さんと数度飲んだという事実を全て伏せて、親友は挙式を敢行。松尾さんは結婚披露宴はもちろん、二次会にも呼ばれることはなかった。
感染していない状態でも、疑心暗鬼から、人々の心は荒んでゆく。そこに感染者がいれば、なおさらだ。千葉県在住の主婦・首藤隆子さん(40代・仮名)は夫がコロナに感染。感染経路不明だが症状は軽い咳が出る程度、入院やホテル療養を案内されることはなく、自室で生活している。困るのは、首藤さんとその息子が、同じ自宅内で生活せざるを得ないことである。
「学校には夫の感染を伝え、先生達が配慮してくれているのですが、子供はすでに学校に行きたがらなくなっています。また、ご近所さんには、夫は出張に行っているということにしているのですが、ある日、窓から外を覗いている夫を見たというお隣さんがみんなに言いふらしてしまって。自宅に籠もる残りの日々を、夫は自室の電気もつけず、決して見つけられてはならない犯罪者のようにひっそりと過ごしました。でも、今も噂が広がっていて、近所付き合いがギクシャクしています」(首藤さん)