誰も好きで感染する人はいない。感染症という病気の前では、誰もが等しく危険にさらされ、いつ罹患するか分からない。感染したからといって責められるべきではない。しかし、そんな「仕方ない」を許さない職場もある。

「鼻水が出ても咳が出ても、頭痛があっても熱があっても出社が前提。感染は自己責任なのだから、会社に迷惑をかけるな、そうはっきりと言われました」

 東京都内の人材派遣会社・P社に勤務していた星野英彦さん(仮名・20代)は、自身の所属する部署で「クラスター」が発生。星野さんはPCR検査を受け、結果は「陰性」だったというが、そこに至るまで、上司との壮絶なやりとりがあったという。

「まず、体調が悪い、と言っただけで、数時間の尋問と反省文を書かされ、自身に責任があると念書まで書かされます。そして、病院や検査に行くなら、会社を辞めてからいけ、と恫喝されるんです。検査の結果、万が一感染して社内に影響が出るようなら、損害賠償だと言われた同僚もいました」(星野さん)

 以前からパワハラ体質の会社であることは分かっていたが、コロナの影響で業績が右肩下がりになると、それに拍車がかかった。

「社員達も脅されるのが怖くて、もしコロナに感染しても、入院で二週間も休めないから検査は受けないと言い、咳き込みながら仕事をしていました。その挙句にクラスターが発生した。保健所からの聞き取りもあったはずですが、当然口止めされました。もう流石に許せなくなり、つい最近会社を辞めたんです。この事実をマスコミにも報じてほしいと、情報提供をしています」(星野さん)

 夏から秋にかけ、一度は感染拡大の「ピーク」があり、そこを乗り越えたように思っていたからこそ、再びの新規感染者増加に絶望してしまうのかもしれない。悲観的になった人々からは余裕が消えはじめ、自分以外のモノやコトを攻撃し、そこに責任を見出そうとする。その行動は明らかにハラスメントだし、そう指摘されればやってはいけないことだと感じるだろう。しかし冷静に考えてみれば、こんなに馬鹿げたことはないと思うのだが、ハラスメントの加害者はたいてい、理由があっての行動だからそれはハラスメントではないという詭弁を自然と操ってしまう。会社を守るために、新人を成長させるために、地域の安心を得るためになどの口実が、コロナにまつわるハラスメントの正当化に利用されている。コロナでパニックを起こした今の社会は、誰でも簡単にハラスメント加害者なってしまう恐ろしい現実に直面している。

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